スパイ拠点? 「黒塗り図面」で建てられるロンドンの中国大使館

■中国が提出した図面に一部黒塗り

 英国のレイナー住宅相は、中国大使館に送った公文書を通じ、大使館本館と文化交流館など設計図上の2つの建物には、「保安上の理由で伏せた」という字句と共にグレーに処理され、明確な用途が明らかにされていない部屋がある巨大な地下空間があると指摘した。中国側が提出した計画案の一部は黒塗りされていた。

 レイナー住宅相は一部が隠された図面について、その理由と正当性を詳細に説明し、非公開部分を含む図面の原本を提出することも検討するよう要求した。隠された部分が許可の透明性を侵害する恐れがあるとの立場だ。

 公文書によると、英内務省・外務省が新しい大使館の敷地の周囲に防護壁のような「強化された警戒」を設置するよう求めたことを明らかにした。

 当初今回の建築計画に対する許可権限は地元自治体であるタワーハムレッツ区にあった。区は2022年に安全上の懸念と住民の反対を受け許可を拒否し、その後は保守党政権も介入しなかった。

 しかし、昨年7月の総選挙で労働党が勝利したことで状況が変わった。中国政府は総選挙の結果を待って、同年8月に同じ申請書を労働党政権に提出した。習近平主席は同月23日、スターマー首相との初の電話会談で、大使館新築の件を議題に取り上げた。その後、労働党政権は大使館建築に対する許可権限を区から中央政府に移管した。

■保守党・反中団体「スパイ拠点化」を懸念

 反対派はこの巨大大使館が中国のスパイ活動拠点になり、中国・香港出身の反体制派の弾圧に使われる可能性があると警告する。保守党は「この大使館はスパイ拠点として使われることが明白であり、中国政府はこの邪悪な使用に関する重要情報を隠した。国家安全保障が脅かされているにもかかわらず、労働党政権はそっぽを向いている」と批判した。

 BBCによると、実際に新しい大使館予定地の向かい側には香港の民主化運動家で2021年に英国に亡命した劉珈汶さん(30)の写真が入った「指名手配書」が堂々と貼られていた。

 指名手配書には100万香港ドル(約1880万円)の懸賞金を出すという記述のほか、「指名手配者と関連犯罪に関する情報提供や中国大使館への身柄引き渡しを求める文言が書かれていた。劉さんはBBCの取材に対し、「建物内に強制収容・尋問施設が設置されることもあり得る」とし、「英国はこれほど由緒ある場所に中国独裁政権の新しい大使館を建てさせてはならない」と訴えた。

 米バイデン政権でサイバーセキュリティー業務を担当していた専門家はBBCに対し、「通信ケーブルがハッキングされる可能性があり、この大使館から800メートル以内にあるものは全て脆弱になり得る」と述べた。しかし中国大使館は「反中勢力が英国政府の許可過程に干渉しようとして、安全リスクを持ち出す卑劣な行動を取っている」と反論した。


【写真】「中国共産党が監視している」 ロンドンで行われた中国大使館新築反対デモの様子

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