11月14日午後6時24分、水西発釜山行きSRT359号。乗務員が通路に立っていた10人の乗客の乗車券を確認し始めると、まずは30代の男性が近づいてきて「東大邱まで行くのに、切符が手に入らなくて」と言ってきた。当時、車内は車両間通路まで乗客でごった返していた。乗務員がもともとの乗車券の2倍に相当する7万3600ウォン(約7800円、運賃+追加金)を受け取って立席券を発券すると、隣にいた乗客たちも待ってましたと言わんばかりに財布を取り出し始めた。50代の会社員のイさんは「2日間、前売り乗車券を購入しようとSRTのアプリに何度もアクセスしたものの、乗車券は手に入らなかった」とし「家(釜山駅)には帰らなければならないため、お金をもっと上乗せする覚悟でひとまず乗車した」と理由を語った。
記者が水西駅から五松駅まで移動する間の約1時間、このように立席券を発券した乗客だけでもざっと30人に上った。反対側の上り列車も状況は同じようなものだった。同日午後5時40分、釜山駅を出発した水西行きSRT358号は、切符なしで搭乗した「不正乗車客」が46人にも上った。
KTXやSRTなどの高速列車の乗車券がなかなか手に入らないことから、乗車券なしで「ひとまず乗車する」不正乗車が歴代最多水準に上っている。特に平日の通勤時間帯と金曜日の下り線、月曜日の上り線は「不正乗車との闘い」が繰り広げられている。
11月23日、本紙の取材と「共に民主党」のアン・テジュン議員室から入手した資料によると、KORAIL(KTX運営会社)とSR(SRT運営会社)の不正乗車摘発件数は昨年52万6900件と、歴代最多となった。今年に入って10月までに、すでに44万3700件が摘発され、1日平均では1460件に上っている。これは昨年の1日平均(1440件)を上回っている。これに先立ち、SRTが本格的に運行を開始した2017年、KORAILとSRによる不正乗車摘発件数は23万4200件(1日平均642件)だった。コロナ禍では18万9200件(1日平均581件)まで減ったものの、その後再び増加基調を維持している。
不正乗車の手口もさまざまだ。11月20日午後2時33分、ソウル駅を出発した浦項行きのKTXでは、乗務員に対して「自主的に申し出たので、立席券を少し安くしてほしい」と交渉する乗客も現れた。このほかにも、トイレに隠れていたのが見つかって「突然おなかが痛くなって言い出せなかった」という「言い訳型」、「座席が足りないのは鉄道運営会社の過ちなので運賃は払えない」という「盗っ人たけだけしい型」、他の時間帯の乗車券を購入して列車を間違えたふりをする「演技型」などの乗客がいるという。