2022年のFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会で、日本は予選でドイツとスペインを破ったものの、ラウンド16(決勝トーナメント1回戦)でクロアチアに敗れた。森保一監督は選手たちを集め、このように語った。「ドイツとスペインに勝って新時代を開いたが、『最高の景色』には届かなかった。みんなが『最高の景色』を目指していけば、必ず歴史が変わる」。監督の目は潤んでおり、選手たちも泣いた。森保監督は目標として8強や4強といった言葉の代わりに、「最高の景色」という隠喩的な表現を使った。
日本サッカー協会は2026年W杯の公式スローガンとして森保監督の言葉を引用し、「最高の景色を 2026」に決定した。「最も高い場所から眺める景色という意味もあれば、これまで見たことのない風景という意味もある」と説明した。優勝するという意味だった。「最高の景色」が刻まれたキーホルダーやバッグ、バッジといったグッズも制作された。その後、森保監督はあらゆる公式の場にこのバッジを着用して現れた。
森保監督は2025年、韓国の洪明甫(ホン・ミョンボ)監督との対談の際にもバッジをつけて登場した。彼は「優勝が目標だと言えば世迷言と思われるかもしれないが、不可能はないと信じている」と語った。洪監督を見つめながら「韓国がW杯で4強に進出するのを見て、アジアもできるという自信を持つようになった」と話した。韓国はすでに4強を経験しているのだから、「最高の景色」はもう決勝しかないのではないかとも問いかけた。洪監督は「私たちもやはり、一度も行ったことのない場所を目指している。16強は基本だ」と応じた。森保監督は「いつか両チーム、決勝で会おう」と言った。
日本のスポーツ界の人間は、紙に意志を刻み込む。大谷翔平は高校時代に81マスの「目標達成シート(マンダラチャート)」を作った。球速や変化球といった技術的な目標とともに、他人が捨てた運を拾うためのゴミ拾いといった内容もある。森保監督も小さな手帳を持ち、絶えずメモを取る。選手たちに戦術を伝えるときは、手帳に記された具体的な数値で伝える。考えを文字にして視覚化することで実行力が高まるという。日本サッカーにおける「最高の景色」とは、そのような心構えなのだ。
今回も日本は「最高の景色」を見ることができなかった。森保監督は4年前のあの時のように選手たちを呼び、このように語りかけた。「目標だった『最高の景色』を見せてあげられなくて申し訳ない。一回一回、本当にきついところを『凡事徹底』で頑張ってくれた。俺にとっての『最高の景色』は見させてもらった」。監督も泣き、選手も泣いた。彼は「顔を上げ、胸を張って次に向かっていきましょう!」と選手たちを抱きしめた。リーダーは口が上手いだけでは務まらないが、言葉の力も持っていなければならない。