4月29日に報じられたドイツ・メディアとのインタビューで、安倍晋三首相は「日本はドイツが行った和解や謝罪の仕方をまねすることはできない」と述べた。「ドイツ式」とは徹底的かつ継続的な謝罪・賠償・処罰を意味する。歴史問題で「ドイツの姿勢を学べ」としてきた韓国や中国の要求を拒否したものだ。

 安倍首相はその理由について「第二次世界大戦以降、欧州とアジアの歴史は全く違う。欧州最大の課題である統合を推進する過程で、ドイツの謝罪が促された」と述べた。また「日本は貧しいアジア諸国に『開発協力』方式で支援を続けてきた」と主張した。これに対し、ドイツの歴史専門家たちは「断片的な知識を動員し、歴史の本末を誤った発言だ」と批判した。

■独の謝罪が欧州統合をもたらした

 大邱大学のナ・インホ教授は「(安倍首相が発言したように)統合の動きがドイツの謝罪を引き出したのではなく、ドイツが先んじて過去の清算をしたことにより、欧州統合を主導した」と述べた。

 欧州統合の動きは1951年の欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が発足したことから本格化したというのが学界の定説だ。しかし、ドイツの戦後清算は1945年に行われたニュルンベルク裁判から始まった。東西ドイツは戦勝国による断罪を完全に受け入れただけでなく、裁判が終わった後、国内法を作って自ら断罪した。戦争犯罪の公訴時効をなくし、88年まで西ドイツで6400人、東ドイツで4万5000人が有罪判決を受けた。西欧と対立していた東ドイツの方が厳しく断罪したという事実は、欧州統合がドイツの歴史清算を導き出した十分条件ではないことを物語っている。

 賠償と謝罪が欧州諸国ではなくイスラエルに焦点を当てていることも、安倍首相の主張への反論になる。ドイツが最近まで戦争被害者に支払った賠償金は700億ドル(約7兆1610億円)。そのほとんどがホロコーストの犠牲者であるユダヤ人に支払われている。大邱大学のアン・ビョンオク教授は「安倍首相の発言は真摯(しんし)にアプローチしたドイツにとって冒涜(ぼうとく)のように聞こえるだろう」と語った。

■北東アジア統合を邪魔するのは日本による歴史否定

 安倍首相は誤った歴史観を日本の戦後清算にも当てはめている。延世大学のコ・サンドゥ教授は「『欧州とアジアの歴史は違うためドイツ式を受け入れることはできない」という主張は『北東アジアに統合ムードがないためドイツ式ではできない』という意味だが、実際は逆だ』と指摘した。

 1990年代以降、韓中日の間では複数回にわたり和解の動きがあった。ところが、日本はそのたびに問題を起こし、和合のチャンスを水の泡にしてきた。小泉首相=当時=や安倍首相の靖国神社参拝、教科書歪曲(わいきょく)問題、独島(日本名:竹島)領有権主張などによってだ。統合ができないから十分な謝罪をしないのではなく、謝罪をしないから統合できないのだ。

 事実、日本は「戦犯処罰」ですら自主的に行ったことがない。46年に戦勝国による東京裁判で裁かれた戦犯たちさえ、後に法的に赦免されたり、宗教的にまつられたりすることでほとんどが復権した。赦免で最も大きな恩恵を受けた戦犯が、安倍首相の祖父である岸信介元首相だということは広く知られている。

■開発協力と謝罪を同一視する無分別さ

 韓南大学のイ・ジンモ教授は「ドイツはどんな場合でも賠償と言い、経済支援という言葉を使ってはいない。経済支援を賠償だと見なす考え方こそ日本の深刻な問題点だ」と述べた。

 実際に日本が賠償金を支払った被害国は4カ国にすぎない。残りの被害国は「日本の復興を助ける」という和解の精神に基づき賠償を放棄した。そのうち貧しい国々は後に「経済協力資金」の形で受け取った。こうした歴史的経緯を勝手に解釈し、「日本の謝罪だ」と主張するのは被害国に対する冒涜だというのが専門家たちの見解だ。

ホーム TOP