「大韓民国は大惨事共和国だ」「いや違う、大事故が発生しても3日で忘れる痴呆共和国だ」「韓国では国民の誰もが1年に1回か2回は遺書を書いておかねばならない」

 京畿道城南市の板橋テクノバレー内での野外コンサート中に換気口のふたが崩落し、16人が犠牲となった事故のニュースに接した市民は、インターネットの掲示板やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを通じて悲しみや怒り、あるいは自嘲や皮肉などさまざまな反応を示した。今年4月、全国民を悲しませた旅客船「セウォル号」沈没事故の影響が今なお残る状況で、またも悲惨な事故が繰り返されたからだ。今年は2月に10人が犠牲となったマウナ・オーシャン・リゾート体育館崩落事故(慶尚北道慶州市)が発生し、4月には旅客船「セウォル号」沈没事故(死者294人、行方不明10人)、5月には京畿道高陽市のバスターミナル火災(死者8人)と全羅南道長城市の療養施設火災(死者21人)など、大惨事が次々と発生している。サラリーマンのチュ・ハンギさん(28)は日本を旅行していた時に今回の事故のニュースに接した。チュさんは「夏を除けばほぼ2カ月に1回のペースで大事故が発生している。今回の事故は10月だから、次は12月にまた大事故が発生するかもしれない。本当に恐ろしい」とした上で「韓国にいる友人とは『放射能問題で苦しんでいる日本の方が安全に感じる』などとやりとりした」と話した。

 これまで発生した事故は、いずれも安全に対する意識の低さに起因する「人災」だったことが分かっている。2月のマウナ・オーシャン・リゾートでの事故は、大量の雪の重みに耐えられず建物の屋根が崩落し、当時現場で新入生歓迎会を行っていた大学生など10人が死亡、204人が負傷した。9月に裁判所は「設計、施工、メンテナンス、管理などそれぞれの段階で担当者がしっかりと注意を払っていれば、事故は未然に防ぐことができた」と指摘し、関係者13人に実刑を宣告した。

 セウォル号沈没事故からわずか1カ月後の5月、京畿道高陽市のバスターミナルで発生した火災も同様だ。溶接作業中に飛び散った火花が原因で火災が発生し、8人が死亡、61人が負傷した。検察は先月捜査結果を発表し、その中で「発注から施工まで、法律に反して安全対策を怠っていた」として、ガスの配管工事を行っていた作業チームのリーダーなど7人を逮捕・起訴し、発注した企業の担当者など18人を在宅で起訴した。しかも施工を受け負った企業は最初から資格も経験もないというずさんな実態も明らかになった。施工会社は工期を短縮するため、地下1階のスプリンクラーの配管の中から水を抜き取り、溶接は資格を持たない人間に作業を行わせていたのだ。

 政府は長城での療養施設火災から3カ月が過ぎた時点でやっと重い腰を上げ、施設で働く担当者が備えるべき資格や能力について定めた「安全管理対策」を発表したほか、施設の面積とは関係なくスプリンクラーの設置を義務化し、3年以内にこれを完了するよう全国の施設に命じた。これまでスプリンクラーを設置した施設は全体のほぼ半分(53.5%)にすぎなかったからだ。

 ニューヨーク・タイムスやCNN放送など主要外信各社も野外コンサートでの換気口崩落事故について報じ、韓国の安全対策のずさんさが原因などと指摘した。AP通信は「旅客船沈没事故を経験したばかりの韓国で、またも事故が発生した」とした上で「韓国での事故はどれもあいまいな規制や処罰の軽さ、安全対策を定めたルールの無視、経済発展を優先する考え方などに起因している」と報じた。AFP通信も慶州でのリゾート施設の事故や旅客船沈没事故などについて言及した上で「セウォル号沈没事故をきっかけに、韓国政府は安全に関する規制を幅広く点検していたが、今回はその最中に発生した事故だった」と報じた。

 とりわけ今回の換気口崩落事故は、誰が見ても危険と感じるはずの換気口の上に多くの観客が立っていた時に発生したため、周囲の悲しみは一層大きい。ネット上には「何回事故が発生すれば、安全対策の重要性を理解するのだろうか」といった主催者側への不満に加え「市民の安全に対する意識にも問題がある」など自省の声も上がっている。

 サラリーマンのCさん(30)は今月4日にソウル・汝矣島での花火大会を見に行った際、漢江の橋の上に押し寄せた群衆を見て驚いたという。Cさんは「見物客は車道を平気で横切り、これを制止する警察官に逆切れしていた」「市民の安全に対する意識がこのレベルだから、毎日のように大事故が起こるのではないか」などと話した。

 釜山市内の高校で2年生の担任をしているという女性教諭(25)は「相次ぐ大事故で高校の担任を受け持っている自分としても非常に不安を感じる」「生徒たちは休憩時間中、3階の教室で体半分ほど外に出して窓枠に腰掛けている。これを見るたびに胸がドキドキする」と語る。この女性教諭は「生徒たちに『危ないから降りなさい』と指導すると、逆にこちらをばかにするように笑っているだけで、その危険性を全く理解していない。家庭や学校、職場などで安全についてしっかり教える教育が絶対に必要だ」と指摘した。

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