「クソニンジン」からマラリアに効果のある調合法を見つけ出した中国中医科学院の屠ユウユウ首席研究員(ユウは口へんに幼)=84=が、今年のノーベル医学生理学賞を受賞したことで、あらためてクソニンジンに対する関心が高まっている。

 屠氏はクソニンジンからマラリアの特効薬となる「アルテミシニン」を抽出し、1990年代以降、マラリアの治療に大きく貢献した功績が認められ、ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった。中国国営の新華社通信は「この薬のおかげで100万人以上の命を救うことができた」と報じた。

 韓国農村振興庁は6日「漢方ではクソニンジンをマラリア治療薬として利用しており、韓国でも朝鮮王朝時代の医学書「東医宝鑑」や「郷薬集成方」で、「瘧疾(マラリア)」や「虚熱」などを治療する「清熱薬」として紹介されている」と説明した。屠氏もこの点に着目し、クソニンジンからマラリア治療薬の成分を抽出したとされている。屠氏は「1600年前の古代の医学書を参考にした。アルテミシニンは現代の科学と伝統医学の融合の成果だ」と話した。

 クソニンジンは韓国全土の道端や空き地、川沿いなどに自生する1年生の草だ。韓国だけではなく世界各地にも分布している。韓国に自生する約40種類のヨモギ類の一種で、昔から道端で普通に見られた雑草だ。犬の糞のように頻繁に見られ、また「犬の糞が落ちているようなへんぴな場所によく生えていることから、韓国では「犬糞ヨモギ」と呼ばれるようになったとされる。葉の形状はほかのヨモギ類よりもニンジンやコスモスなどに似ており、春にクソニンジンを見ると、ニンジンの葉と非常に似通っている。

 だが最近、クソニンジンを見つけるのは難しくなった。2008年、米国ワシントン大学の研究班が、クソニンジンには既存の抗がん剤の1200倍もの抗がん成分が含まれているという研究成果を発表したことで、全国的にクソニンジンを無理やり採取し、服用したためだ。インターネットを見ると、現在でもこの植物の効能や服用方法についての書き込みが多く寄せられている。そのため「犬の糞のように頻繁に見られる雑草」がすっかり珍しい存在になり、一時は多くの農家が消毒用の作物として栽培するほど脚光を浴びた。ところが2年前、あるテレビ番組が、クソニンジンの抗がん効果に疑問を呈する内容を放送したことで、現在ではさほど注目されなくなった。クソニンジンのほか、ツメレンゲやスベリヒユ、アッケシソウなども、抗がん効果などがあるといううわさが流れ、現在では見つけるのが困難になっている。

 農村振興庁薬用作物課のイ・ジョンフン博士は「ワシントン大の研究はまだ初期段階のため、クソニンジンの抗がん効果は誇張された側面があるが、クソニンジンは食べても問題が生じる植物ではない」と話している。

 クソニンジンは一般的なヨモギ類のほか、毒性があるブタクサにも似ているため注意が必要だ。ブタクサをクソニンジンと間違えて食べた場合、腹痛を引き起こす恐れがある。クソニンジンと区別する方法は、まず葉の大きさを見ればよい。一般的なヨモギ類は葉が大きい方だが、クソニンジンは葉が小さく、幾つにも分かれている。また、クソニンジンはヨモギの香りではなく、少しむかむかするにおいを発しているのが特徴だ。一方、ブタクサは葉に柔らかい毛が生えていて、全体的にやや白っぽく見え、またにおいが全くない点がクソニンジンとは異なっている。

 大韓韓医師(韓方〈韓国の伝統医学〉医師)協会のキム・ジホ理事は「クソニンジンに解熱や抗酸化などの効果があることは『東医宝鑑』でも紹介されているが、一般人がうわさだけを頼りに無分別に服用すると副作用が生じる恐れがある。クソニンジンでノーベル医学賞を受賞したという知らせを受け、人々が無分別にクソニンジンを服用するのではないかと心配だ、必ず専門家と話し合った上で服用してほしい」と指摘した。

ホーム TOP