「米国発のグローバル貿易戦争」が始まった。米国のトランプ政権は22日(現地時間)、外国製洗濯機と太陽光パネルに対しセーフガード(緊急輸入制限措置)を発動した。2002年に韓国製を含む輸入鉄鋼製品を対象にセーフガードを発動して以来、16年ぶりのことだ。セーフガードは主に新興国が先進国から市場を守るために活用していたものだが、今回は米国が「通商戦争の武器」として利用するものだ。

 米紙ニューヨーク・タイムズは「今回のセーフガードの主なターゲットは韓国と中国だ」と報じた。米国が輸入する洗濯機の約90%に当たる250万台がサムスン電子やLG電子など韓国製品だ。今年最大50%の関税が課せられ、業界では、セーフガードで最大数千億ウォン(数百億円)の損失が生じると見られている。太陽光パネルは今年最大30%の関税が課せられる。中国も洗濯機と太陽光製品が制裁される。

 通商分野の専門家らは、「執権2年目を迎えたトランプ大統領は就任時に『アメリカ・ファースト(米国優先主義)』を掲げ、『保護貿易主義』という剣を本格的に振り回し始めた」と見ている。特に、米国が最大の貿易赤字国である中国をターゲットとする過程で、韓国も米国の射程圏内に入ってしまったという声もある。梨花女子大学のチェ・ビョンイル教授は「自国の利益のためには、既存の通商秩序も無視するというのがトランプ政権の方向性だ」と語った。トランプ大統領は不公正貿易を調査する大統領直属機関「米国際貿易委員会」から自由貿易協定(FTA)を結んだ国は規制対象から外すよう勧告を受けたが、これを無視した。その一方で、米国の洗濯機メーカー「ワールプール」の要求は受け入れた。韓国産業通商資源部(省に相当)のキム・ヒョンジョン通商交渉本部長は23日、「今回のセーフガードは急激な輸入増加などの要件を満たしていなかった。世界貿易機関(WTO)に提訴する」と表明した。

 英紙フィナンシャル・タイムズは22日、トランプ政権の洗濯機・太陽光セーフガード発動に関して、「米国は中国に対する攻撃の手綱を引き締め始めた」と分析した。事実、米国の中国に対する貿易制裁措置は今後も続く見通しだ。トランプ政権は昨年4月、貿易拡大法第232条規定により鉄鋼・アルミ輸入が国家安保に与える影響についての調査に入った。また、8月には中国の知的財産権侵害の調査に着手した。11月には、中国製アルミニウムの反ダンピング・相殺関税職権調査を開始した。職権調査とは、米国メーカーの要請がなくても政府が特定国の輸出品についてダンピングの有無を調べ、高い関税を課す強力な貿易制裁手段のことで、1991年以来の措置だ。中国商務省は同日、「米政府の貿易救済措置の乱用だ」と強く反発した。

 トランプ大統領の通商圧力は、今年11月の中間選挙を念頭に置いた措置だと受け止められている。支持率の低下に苦しんでいるトランプ大統領は、通商分野で成果を挙げなければ白人労働者の支持層を集められない。

 問題は、この過程で韓国が大きな被害を受けるということだ。韓国の対米貿易黒字は中国の30分の1だ。しかし、米国の経済・通商分野専門シンクタンク「ピーターソン国際経済研究所(PIIE)」が昨年発表した報告書「トランプ政権の保護貿易」によると、米国が韓国から輸入する品目のうち、反ダンピング・相殺関税などの規制中か、あるいは規制を念頭に置いて調査中のものの割合(金額ベース)は12.2%と最も高かった。中国は10.9%で、韓国より低かった。

 また、対米貿易黒字が韓国の3倍である日本は、米国からこれといった報復を受けていない。これは、安倍晋三首相の素早い通商外交や、日本の中国けん制という役割によるものだとの見方がある。韓国のクルミ割り器(nut-cracker)の中のクルミのような状況は深刻化する恐れもある。

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