2020年から中学・高校で使用される歴史教科書について、韓国政府が取りまとめた執筆基準試案の内容が明らかになったが、その中で「北朝鮮による6・25(朝鮮戦争)南侵」や「北朝鮮の世襲体制」「北朝鮮の人権」などの用語が全てなくなっていたことが分かった。「6・25南侵」や「北朝鮮の人権」などの用語は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時の2007年から10年以上にわたり執筆基準に記載されていた。大韓民国が進むべき方向を「自由民主主義」から「自由」を削除し「民主主義」とのみ規定した与党改憲案の波紋が広がる中、今回新たに教科書の問題まで浮上したのだ。

 現行の教科書執筆基準には「6・25戦争については北朝鮮による違法南侵を明確にする」と記載されている。ところが韓国教育部(省に相当)が教育課程評価院を通じて現在作成作業中の新教科書試案には「6・25戦争の背景と展開の過程を見る」としか書かれておらず、誰が戦争を起こしたかはあいまいなままだ。旧ソ連の極秘文書が公開された時点で、それまで明確でなかった北朝鮮による南侵を見直そうとするいわゆる「修正主義史観」は全てその根拠を失ったはずだ。ところが他でもない韓国国内で北朝鮮の南侵を隠そうとする勢力が再び動き出している。すでに現行の一部教科書でも6・25戦争の責任はあいまいに記載されているが、今度は執筆基準までそのような形に変えようというのだ。このままだと韓国の子供たちは6・25戦争を誰が始めたのかさえ知らなくなるだろう。教育部はさらに「世界史的な奇跡」である大韓民国の経済成長を「政経癒着」によるものと規定し、韓国の農村を発展させ世界に広がりつつある「セマウル運動」も最初から教科書に入れないことにした。

 これらの試案を作成した研究チームは歴史学の大学教授や教師など20人からなるそうだが、その中には国定教科書に強く反対した人物もいるようだ。彼らがあれほどまで執拗(しつよう)かつ暴力的な手段で国定教科書に反対する運動を続けた理由は、左翼偏向の教科書を使って他人の家の子供たちを洗脳するためだったのだ。

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