韓国政府の外交・安全保障関連部処(省庁)はこれまで北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)元偵察局長(現在は朝鮮労働党統一戦線部長)を哨戒艦「天安」沈没の主犯とみなし、制裁対象者のリストに上げていた。ところが最近になってこれらの部処が一斉に金英哲氏の擁護に乗り出した。まず韓国統一部(省に相当、以下同じ)は23日「金英哲来韓に関する説明用資料」と題された6頁からなるプレスリリースをメディアに配布した。前日に北朝鮮が平昌オリンピック閉会式に派遣すると通知した金英哲氏について「哨戒艦『天安』沈没の主犯と特定するのは難しい」というのがその趣旨だ。大統領府、国家情報院、国防部もこの日、同じような趣旨のコメントを発表した。外交部に至っては米国政府への説得に乗り出しているようだ。

■金英哲氏の代弁人に成り下がった韓国統一部

 統一部の白泰鉉(ペク・テヒョン)報道官は23日午前10時から始まった定例会見の際、金英哲氏来韓に伴う問題について問う質問に「挑発が再び起こらないよう、平和を構築するための努力がさらに重要だ」という趣旨の準備された説明を繰り返し読み上げた。統一部が運営するウェブサイトに哨戒艦沈没と延坪島砲撃の関連人物として故・金正日(キム・ジョンイル)総書記、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と共に金英哲氏の名前が明記されていることについて問う質問にも、白報道官は5-6秒ほど間を置いてから「政府は相手が誰であり、過去に何があったかにこだわるよりも…」という内容の原稿を再び読み上げた。

 統一部はこの会見直後、上記の金英哲氏来韓に関する資料を配付した。その中には「政府は南北関係の発展と韓半島(朝鮮半島)平和定着のため実質的な対話が可能な相手かどうかを見極める」「このような次元で政府は金英哲氏の来韓受け入れという困難な決定を下した」と記載されていた。

 この「金英哲資料」には統一部が独自に整理した11項目の「争点事項」と3項目の「主要事項」が記載されていた。しかしその中には事実に反するものや、誤解を招きかねない内容もあった。統一部は資料の中で、2010年8月に金英哲氏を制裁対象とした米国の行政命令13551号について「哨戒艦沈没と金英哲氏を直接関連づけたものではない」と主張している。しかしこの行政命令13551号は制裁の理由について▲哨戒艦沈没▲2009年の第2次核実験▲国連安保理決議1718号・1814号違反(ミサイル発射)-などが明記されており、しかもこの行政命令で制裁対象に指定された人物は金英哲氏だけだ。これについてある外交筋は「行政命令13551号は金英哲氏に哨戒艦沈没の責任を問うための制裁」と断言した上で「統一部の説明は到底納得し難い」と指摘している。

■統一部を援護する国家情報院と国防部

 国家情報院と国防部も統一部の援護射撃に乗り出した。国会情報委員長を務める保守系野党・自由韓国党の姜碩鎬(カン・ソクホ)議員によると、国家情報院の金相均(キム・サンギュン)第2次長はこの日行われた国会情報委員会の懇談会に出席し、金英哲氏が哨戒艦攻撃の黒幕だったかどうかについての見解を語ったという。金第2次長は「推測は可能だが、金英哲氏がはっきりと指示したかはわからない」とした上で「金英哲氏が南北関係の最高責任者であり、軍事的な緊張緩和や南北関係の進展、非核化を含む様々な課題について実質的に話ができる責任者と考え、受け入れることにした」と説明したようだ。

 国防部の崔賢洙(チェ・ヒョンス)報道官は記者団との懇談会に出席した際、ある記者から「当時のファン・ウォンドン国防情報本部長は偵察総局の犯行である可能性に言及したが、国防部の立場はどうか」との質問を受けると「可能性があると話したものであり、公式の結論を出したわけではない」とコメントした。崔報道官はさらに「(国防部の公式文書に)金英哲氏や偵察総局について言及する内容はない」とも主張した。大統領府もこの日資料を配付し、その中で「国民の多くも北朝鮮高位級代表団の来韓が韓半島の緊張緩和に多くのプラスをもたらすと考えている」との考えを示した。

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