▲上海市内にある現代自動車の販売店は客がおらず閑散としていた。現代・起亜自の中国国内での販売順位は2014年の3位から今年1-2月には10位圏外まで転落した。/上海=金康漢記者

 記者は今月17日、上海市閔行区にある起亜自動車の販売店を訪れた。従業員2人が座っているだけで客の姿は見えなかった。販売担当者が無言で記者一行を迎えた。こちらから中型セダン「K5ハイブリッド」の価格を尋ねると、従業員の1人が立ち上がり、「定価は22万9800元(約383万円)だが、18万9800元まで値引きを行うセールを実施中だ。全額現金ならさらに値引きが可能だ」と答えた。販売担当者のYさんは「セールを行っても以前のような人気は取り戻せていない。中国では韓国車が危うい状況にある」と話した。

 現代・起亜自が世界最大の自動車市場である中国で日本車と中国車の板挟みになっている。2017年に韓国への終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備による後遺症で中国国内での販売台数が急減したと聞いていたが、実際に現場で肌で感じた状況はさらに危機的なものだった。

■THAAD危機で苦戦した韓国車、中国市場で危機感

 現代・起亜自は2016年まで中国市場で好調を維持していた。同年は全世界の有力ブランドが全て進出している中国市場で販売台数は現代自が6位、起亜自が11位を占めていた。しかし、両社の順位は昨年、それぞれ9位、21位に後退した。現代自の今年1-3月の販売台数は前年同期比18.4%減だった。11-14年は中国市場で10%台のシェアを記録していたが、今年3月時点のシェアは3.9%まで低下した。販売台数の落ち込みを受け、現代自は北京第1工場の閉鎖を決定し、起亜自は塩城第1工場(江蘇省)での起亜自モデル生産を中断した。

 現代・起亜自の中国での不振はこれまで成長が続いてきた中国の自動車市場が昨年、前年比で2.8%の縮小に転じたことも一因だ。しかし、日本車の販売実績は異なった。日本車は14年に比べ、ホンダが68万台、日産が34万台、トヨタが34万台余りそれぞれ販売台数を伸ばした。

 中国車も急成長している。14年には10位圏外だった吉利汽車は昨年、160万台余りを販売し、3位に浮上した。現代・起亜自から離れた消費者を日本車や中国車が取り込んだ格好だ。

 これまで現代・起亜自の不振をTHAAD問題の影響と分析する見方が多かったが、ブランド力も定価したとの声も聞かれる。韓国車が日本と中国の板挟みになったことが最大の理由だ。

 起亜自の販売店から車で10分ほどの距離にあるトヨタの販売店は活気に満ちていた。従業員3人がドアの外まで走り寄ってきて、「どんな車をご紹介しましょうか」と客を出迎えた。販売担当者のHさんは「中国人の所得が増え、日本車は故障しないといううわさが広がった。米国市場で認められた日本車は人気が高い」と話した。この営業所でも中型セダンのカローラを値引きなしの23万800元で販売していた。

 店内には車を購入した客に贈るテレビ、ノートパソコンなどの景品数十台が積み上げられていた。

 中国車の販売店も混み合っていた。吉利汽車の販売店では起亜自の中型セダンK5を全額現金で購入した場合の価格とほぼ同水準となる17万9800元で中型セダンを販売していた。販売員のDさんは「月平均で600人が来店し、うち100人余りが車を購入していく。今月は韓国人2人にも販売した」と話した。

■韓国車、新車投入で反撃へ

 中国で韓国車が苦戦する理由は、THAAD問題の余波でブランドに対する支持度が打撃を受けたほか、中国で人気が高いスポーツタイプ多目的車(SUV)の新車投入が遅れるなどの問題が重なり、顧客が急速に離れたからだ。現地で会った中国人は日本車のブランドと品質に好感を示していたほか、最近の中国車の成長を受け、格安の中国車を購入したいと語る人も多かった。中国の自動車市場全体に占めるSUVの割合は15年の15%から17年には41%に上昇した。しかし、現代・起亜自がこの期間に投入したSUVは15、16年が各1モデル、17年が2モデルにすぎなかった。

 専門家は中国市場で社運を懸けた投資を行うべきだと指摘する。竜仁大中国経営研究所のパク・スンチャン所長は「現代・起亜自の失敗原因を全てTHAADのせいにするのは、自分を慰めるための口実だ。中国政府が積極的に推進するエコカー政策に歩調を合わせ、ハイブリッド車、電気自動車を多数投入するとか、中国メーカーと共同で電気自動車のプラットフォームを開発するなど変化を目指さなければ、反撃を狙うことはできない」と指摘した。

 現代・起亜自は今年、中国市場でSUVの「ix25」第2世代モデル、エンシノ(コナの電気自動車版)、領動(リンドン、アバンテのプラグインハイブリッド版)、新型K3などの新車を発売し、反撃を狙う。現代自は今月中旬、中国人が好む先端機能を数多く搭載した「勝達(ションダー)」(中国版サンタフェ)を発売し、弱点とされてきたSUVのラインアップを補強した。同社関係者は「中国市場に適した新車を攻撃的に発売し、中国市場でのシェア回復に取り組む」と述べた。

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