韓国の消費者物価が史上初めて2カ月連続でマイナスを記録し、景気低迷と物価下落が重なるデフレを警告する声が高まっている。景気面では企業が投資を減らし、消費者は財布のひもを締め、生産と雇用が不振を繰り返している。こうした中、0%台で推移していた物価上昇率が8月以降マイナスに転落し、典型的なデフレパターンと似ているとの意見が相次いでいる。

■景気低迷の中で触発されたデフレ懸念

 経済が正常ならば、消費者物価は緩やかに上昇するはずだ。企業は利益を得るために投資を増やし、そうすれば自然に雇用拡大→所得と消費の増大→内需活性化というプラスの循環が起きる。その過程で企業と家計の資金需要が増え、市中の通貨量が増大し、商品とサービスの価格(物価)も徐々に上昇するからだ。韓国銀行の物価安定目標が「2%」であることも適正水準のインフレが重要だからだ。今後価格が下落するとの心理が広がれば、企業と家計はいずれも投資と消費を増やさず、市場は凍りつくことになる。

 専門家が現在の韓国経済をデフレ初期と見なす根拠は、緩やかなインフレが起きる過程で正反対の現象が起きているからだ。単純に物価が下落したからではない。投資と消費が減り、それに伴う雇用と内需の低迷が長期化し、経済心理が委縮するなど韓国経済の活力が大幅に低下している。設備投資は昨年5月から今年8月まで16カ月連続で減少(前年同月比)し、同じ期間に経済心理指数(季節調整済み)もマイナスが続いた。

 輸出の減少も深刻だ。産業通商資源部は1日、9月の輸出額が前年同月比11.7%減の447億ドルだったと発表した。昨年12月から10カ月連続でのマイナスだ。実体経済が悪化し、成長率見通しも下方修正されている。国際的な信用格付け会社、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は同日、韓国の成長率見通しを2%から1.8%に引き下げた。S&Pは「景気見通しに対する家計と企業の確信が大幅に低下し、輸出減少につながり、同時に輸出の伸びも鈍化した」とし、「設備投資は今年上半期に前年同期比で12%減少し、特にぜい弱だった」と指摘した。今年の成長率見通しを1%台に引き下げる経済シンクタンクが徐々に増えている。

 韓国政府は「最近のマイナス物価は前年同期の猛暑で農畜産物の物価が異常に高かったためだ」とし、「年末には0%台の半ばから後半を回復すると」反論した。しかし、年末に物価が一時的にプラスになるとしても、景気低迷に伴う需要減少を克服できなければ、専門家は中長期的な物価下落現象を避けることはできないと指摘する。

■長期不況を経験した日本との類似点

 韓国経済の最近の状況は1990年代の日本と類似しているとの評価が多く聞かれる。日本は1990年代半ばに生産年齢人口(15-64歳)が初めて減少し、数年後にデフレが本格化し、長期不況の泥沼に陥った。韓国も2017年に生産年齢人口が初めて減少(2万4000人減)し、2年後の今年に初めてマイナス物価となった。20年程度の時差を置き、日本の同じ轍(てつ)を踏んでいる。慢性化する低成長とともに、家計の平均消費性向が低下した点、最近輸出低迷などの危機に直面した製造業中心の産業構造も日本が歩んできた道と似ている。

 ただ、日本の長期不況は1980年代に株式・不動産価格が急騰した後、90年代初めにバブルが崩壊したことで始まった点が韓国とは異なる。LG経済研究院のイ・ジピョン常勤諮問委員は「韓国にはまだバブルの兆候が表れてはいないが、生産年齢人口の減少と高齢化で経済活力が大幅に鈍化している点で日本と似た部分が多い。マイナス物価から早期に脱却できなければ、韓国も日本のような長期不況を経験しかねない」と述べた。

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