「1000ウォン(約94円)の安物」を侮るなかれ。ダイソーのことだ。1997年に創業し、500-5000ウォンの6つの価格帯を守り、昨年には売上高が1兆9700億ウォンを超えた。年間で1000ウォンの商品20億個を販売した計算だが、全国1300カ所の店舗で毎日5000個以上の商品を売り上げて初めて可能な数字だ。前年に比べ、売上高は20%、店舗数は12%増えた。今年も2桁台の成長を見せている。秘訣(ひけつ)は何か。価格があまりに安いため、クーパン(Coupang)などの通販業者では配達費用の採算が合わないという「幸運」もあった。しかし、競争力の軸となるのは「コストパフォーマンス」だ。「より安くより良い商品」を執拗(しつよう)に攻略した。韓国よりも先に長期不況を経験した日本の消費産業のキーワードも「コストパフォーマンス」だった。

 全従業員はもちろん、今年76歳になる朴正夫(パク・チョンブ)ダイソー会長もコストパフォーマンスのためならどこへでも出向く。朴会長は先月最終週、香港の商品展示会を訪れた後、3泊4日で中国・広州に出張した。朴会長は現在でも年間100日以上は海外に出張している。飛行機の搭乗マイル数だけで300万マイルを超えた。「1000ウォン」の価値はますます低下するが、生き残りのために国内700社以上、全世界35カ国、3600社以上の納品業者を自分の足で回り、商品を発掘、誘致しているのだ。「コスパが悪ければ、消費者が真っ先に気づいて買わない」--。それは朴会長が決して変えない信念だ。

 ここで韓国とその政府に視線を向けてみよう。国家も国民が対価(税金)を支払い、商品(政策)を消費する構造だ。少ない税金で効率的な政策を展開するのが良い政府だ。ところが、政府は民間企業に比べ、先天的にコストパフォーマンスが劣る。政府の介入で全てを解決しようとした社会主義の失敗がそれを立証している。それゆえ賢明な成否は規制改革を通じ、政策的機能の多くが民間セクターでなさされるように導く。コストパフォーマンスが勝るからだ。それでも政府が介入するのならば、カネを出す国民を思い、コストパフォーマンスを最大化する努力が必須だ。そのためには細かい事前調査、シミュレーションなどを通じ、副作用を最小化する仕組みを設けなければならない。それを先進国では証拠に基づく政策(evidence based policy)と呼ぶ。

 我々はどうだろうか。まず50兆ウォン以上の税金をつぎ込んだ政府の雇用政策の成績表を見ればあきれる。政権発足から2年で20兆ウォン以上増額した福祉予算、世界最強の競争力を持つ原子力発電事業の根幹を崩壊させる環境エネルギー政策にも声が出ない。雇用を創出するな、福祉を充実させるな、環境にやさしいことをするなとは誰も言わない。だが、これほど非効率的にカネを使ってどうするのか。「果たして自腹だったらこんな使い方はするだろうか」という政策があふれている。1000ウォンを投じて100ウォンの商品を売るようなものだという批判が出るのは当然だ。そんな商品でさえ不良品だらけだ。それで問題点を指摘すると、投じたのは1000ウォンではなく900ウォンで、商品は100ウォンではなく200ウォンだといった弁解をする。問題の本質は政府のコストパフォーマンスの低さなのだが、重箱の隅をつつくかの振る舞いだ。勿論いつも最善の商品ばかり繰り出せるわけではない。だが、税金が必要ない規制改革には手をこまぬいたままで、無理に政策を推進し、コストパフォーマンスを検証せずに強行してばかりでは、不良政策が量産されるのは当たり前だ。「商売人」はコストパフォーマンスが高い商品を作れなければ市場から締め出される。コストパフォーマンスが悪い政策を打ち出す政府には結局、国民が選挙を通じて審判を下すしかない。

李仁烈(イ・インヨル)産業1部次長

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