今年8月、ソウル・光化門広場に童謡とアニメ音楽が流れた。ステージに上がった子どもたち10人ほどが子どもらしく歌っているのかと思った。ところが、「あっちを見てもこっちを見ても自韓党(自由韓国党)は土着倭寇」「売国奴自韓党フーフー吹いて島国に送ろう」などの歌詞が子どもたちの口から飛び出した。かつての統合進歩党勢力などの親北団体が何も知らない子どもたちを利用して政治集会に駆り出したのだ。この動画には「ここは北朝鮮か」などのコメントが書き込まれている。北朝鮮の集団行動に似ていたからだ。

 これらの団体は反米・反日デモならば違法でもためらわない。光化門広場の世宗大王像に登って「韓日GSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄を妨害する米国糾弾」デモをして、日本のテレビ局のソウル支局に無断侵入した。米大使館官邸の塀も乗り越える。米国と日本さえなくなれば韓半島の平和がおのずと訪れるかのように主張する。ところが、米大使館官邸の塀を越えた時に明らかになったスニーカーのブランドを見たら「米資本主義の象徴」とされるメーカーのものだった。

 昨年末、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の訪韓を歓迎するという団体が雨後の竹の子のように現れた。金正恩委員長が「偉人」だとして「偉人歓迎団」「白頭称賛委員会」「花の波芸術団」など名称はさまざまだったが、その根は統合進歩党勢力につながっている。「金正恩委員長ようこそ」と光化門交差点で歌い踊り、「歓迎芸術祭」では濃いピンク色の北朝鮮式の花飾りを振って歓声を上げた。平壌市内に金正恩委員長が姿を現すと、こうした光景が繰り広げられる。演劇では「在韓米軍が出ていき5兆ウォン(約4560億円)大学生に分けてくれる。これぞ『白頭神霊様』の能力」と言った。金正恩委員長が「神霊様」だそうだ。北朝鮮式の偶像化だ。

 先日の親北傾向の集会では、青瓦台近くでグランドピアノ50台、ギター100本、ハーモニカ100本などを演奏して「李石基(イ・ソッキ)釈放」を要求した。この集会は北朝鮮と同調して国家基幹施設を攻撃する方法を話し合ったとして2013年に懲役9年を言い渡されて服役中の李石基・元国会議員の釈放を要求する集会だ。この21世紀に、ウクライナの反政府デモ時のように、疲れたデモ隊をピアノの独奏で癒やすことはあっても、楽器を「人海戦術」のようにデモの武器に使うのは見たことがない。李石基元議員の写真がついたプラカードを手に「我々が李石基だ」と叫ぶ人々もいた。まるで「李石基偶像崇拝集会」だ。

 親北集団の集会やデモには「偶像崇拝」のような光景がよく登場する。かつて主体思想派の全国大学生代表者協議会(全大協)の集会でも、20代前半の「全大協議長様の登場」はほぼ「首領様のお出まし」並みだった。北朝鮮に追従するうちに「北朝鮮式」がよく見え、慣れてくるせいだろうか。李石基元議員釈放デモの参加者たちは、太鼓の音に合わせて踊りながら「野蛮を振り払う正義の太鼓の音」だと言った。北朝鮮に行って「野蛮を振り払う正義の太鼓の音」を出し、踊ってほしいものだ。

アン・ヨンヒョン論説委員

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