船橋洋一アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)理事長インタビュー

 今年新型コロナウイルス問題が発生する7年前に人工呼吸器や医療従事者の不足問題を正確に予測した報告書を出していた一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)の船橋洋一理事長。船橋理事長は9日、朝鮮日報とのインタビューで、新型コロナウイルス問題に関して、鋭い洞察力で日本や国際社会を分析した。

-あなたは「日本は危機的な状況において機動力が弱い」と言った。これは安倍政権以降の問題なのか、それとも日本社会の問題なのか。

「日本社会全体の問題である面が大きい。日本社会全体が忖度(そんたく=立場が上の人などの心情をくみ取って行動すること)社会であることが最大の原因だ。日本は他人の気持ちを考えて行動する傾向が強い。公務員だけでなく、日本人自体が『忖度民族』だ。平常時はこうした文化は他人の気持ちを思ってすることなので良い点もある。しかし、このような危機社会では誤った結果につながりやすい。これが日本の弱点だ」

 船橋理事長は「忖度民族」について言いたいことがいろいろある様子だった。

「日本は安心社会を志向する。自分が原因になって不安を起こすようなことはしたがらない。このような傾向がとても強い社会だ。だから、他人と違う意見にあまり言及しない。目立ちたがらない。みんな同じだ。危機にある状況では、こうした民族性は危険だ。みんなそのまま(パンデミック〈感染症の世界的大流行〉などで)やられてしまう可能性がある」

-日本では緊急事態が宣言されたものの、書類に印鑑を押すという文化のために在宅勤務が難しいと指摘されている。

「それが日本の最大の問題だ。日本のデジタル・トランスフォーメーション(Digital transformation=情報技術〈IT〉浸透で人々の生活をより良い方向に変化させる取り組み)の最大の壁はまさにハンコ文化だ。私は政府の会議で、何度もハンコや印鑑をなくすべきだと主張したことがある。すると、(朱肉を使わない)自動ハンコができた。ハンコそのものをなくさなければならないのに…そういうバカなことをしてきた。今回期待されるのは、新型コロナウイルス問題でオンライン診療が本格化することだ」

 船橋理事長は在宅勤務が遅れている状況に続いて、次のような話もした。

「米国では新型コロナウイルス感染拡大でオンライン教育が広がっている。中国でも2億人の子どもたちが一斉にオンラインで教育を受けている。しかし、日本は子どもたちをそのまま遊ばせている。日本人は英語の実力が落ちると言われている。このような時に1カ月間、オンラインを利用して英語の集中教育をしたらどうだろうか。家にいる機会を利用して、オンラインで英語を学ぼうと言えば良かったのに、そうした雰囲気はない」

東京=李河遠(イ・ハウォン)特派員

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