韓国の宇宙開発を担当する国策研究機関「韓国航空宇宙研究院」(航宇研)が、300億ウォン(現在のレートで約26億7000万円。以下同じ)投じて開発したロケット「羅老号」の重要パーツをくず鉄として数百万ウォン(100万ウォン=約8万9000円)で売り払い、10日後に買い戻すという事件があった。ロケットの重要技術が危うくスクラップ価格で外部に流出するところだった。科学界からは「ねじが外れたという程度ではなく、もともとねじがない組織」「あり得ない、とんでもない事件」という批判の声が上がった。

 航宇研や科学界関係者が25日に明らかにしたところによると、全羅南道高興にある航宇研羅老宇宙センターは今年3月20日、羅老号のパーツ10点を700万ウォン(約62万円)でくず鉄業者に売り払った。廃棄品目10点の中には、さび付いた鉄製の保管ボックスが含まれていた。航宇研は、この中に羅老号の重要部品である「キックモーター」の試作品があったという事実を知らなかった。キックモーターは、ロケットに積まれた衛星を軌道へ投入する役割を果たす。後になってこれを知った展示館の元担当者が問題を提起し、航宇研は売却から10日後、京畿道平沢のくず鉄商の手に渡ったキックモーターを500万ウォン(約46万円)で買い戻した。航宇研は、廃棄品目の検討を入社3カ月の職員に任せ、運営室長の専決で最終決定したことが分かった。航宇研は内部監査に着手し、責任の所在を究明したいと表明した。

 全羅南道高興の羅老宇宙センターは、宇宙科学館での展示を目的として、4年前から羅老号のパーツをセンター内の空き地に保管してきた。羅老号は2013年に韓国がロシアと共同開発して打ち上げたロケットだ。1段目はロシアが、2段目は韓国が開発した。今年の初め、同センターはもはや必要ない一部のパーツを廃棄することにした。廃棄品目10点は、衛星を保護する「フェアリング」と呼ばれるカバーや、実験でばらばらになった部品の残骸、燃料タンクの模型などだ。ここには、縦1.5メートル、横3.1メートル、高さ1.5メートルの鉄製の保管ボックスも含まれていた。本紙が入手した報告書「宇宙科学館野外所蔵発射体廃棄品目関連検討意見」によると、鉄製ボックスについては「発射体構成品の移動に使用され、内部は空になっており、外部はさびがひどくて活用価値がなく、展示用としても何の意味もない」と廃棄事由が記されている。備考欄には「さびがひどくて醜く、観覧客のクレームが発生」とあった。

 ところが、このボックスの中にキックモーターの試作品が入っていた。今回スクラップとして売り払われ、後に買い戻されたキックモーターは「認証モデル」(QM:Qualification Model)だ。QMとは、実際の発射時に使う「飛行モデル」(FM)と同じように作って実験室で性能を認証するモデルを指す。航宇研は羅老号の開発当時、複数の条件で実験を行うため15基のキックモーターを作った。このうち1基が鉄製のボックスに収められ、朽ちるがまま4年間も野外に放置されていた。そうして昨年8月に宇宙科学館の担当者が変わったことで、キックモーターの存在自体が忘れ去られた。

 科学界では既に羅老号プロジェクトは終了しているため、キックモーターをこれ以上研究に使うことはないが、もし外部の手に渡ったら、数百億ウォン(100億ウォン=約8億9000万円)かけて開発した韓国の技術がそっくり流出しかねなかった-と指摘されている。

 これは単なるミスではなく、構造的な問題のせいだという指摘もある。航宇研は、試作品の管理・保管・廃棄に関する規定そのものを持たない。航宇研は「誤りを認める」としつつ「現在開発中の韓国型発射体『ヌリ号』の場合は試作品を徹底して管理している」とコメントした。

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