▲チェ・ヨンジン政治部記者

 韓国の与党「共に民主党」のイ・ヘチャン代表は7月15日、朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長のわいせつ疑惑に関連し「被害を訴えた人が見舞われている苦痛に深い慰労を申し上げるとともに、民主党代表として痛切なる謝罪を申し上げる」と発言した。朴・前市長のわいせつ疑惑が持ち上がってから6日が過ぎ、ようやく直接謝罪したのだ。先にイ代表は、事件の被害者側が記者会見をした13日、首席スポークスマンを通して「代理謝罪」を行った。やりたくない謝罪を代理人に押し付けた、という批判世論が強まるや、遅まきながら出てきたのだ。

 しかし、イ代表がついに謝罪しなかったことがある。取材陣に投げ付けた「××の子ども」という暴言だ。イ代表は7月10日、朴・前市長の殯(ひん)所(出棺まで棺を安置しておく場所)で、ある記者が「故人を巡る疑惑が浮上しているが、党レベルの対応をするのか」と尋ねると「そんなこと(質問)をこの場で、礼儀だと思っているのか」と激怒した。そして「××の子どものようだからと」と暴言まで吐いた。

 この日、取材陣が投げ掛けた質問は、朴・前市長やイ代表に恥をかかせようという目的のものでも、記者の個人的な気掛かりを解決しようとするものでもなかった。3期目の市長にして次期大統領選挙の有力ランナーだった人物の性スキャンダル疑惑について、所属政党の代表に対応策を尋ねるものだった。記者として当然の、国民に代わって質問する、権利にして義務を実行したのだ。イ代表は政権与党の代表として、この質問に答えるべきだった。ところが答えるどころか、逆上と暴言だけを浴びせた。これは単に記者に対してのみならず、答えを待つ国民に対して怒ったものでもある。

 謝罪問題を巡り、イ代表側の人物は16日も「取材陣が礼儀なく質問したことについてまず謝罪しない限り、イ代表も謝罪しないだろう」と主張した。記者の質問が朴・前市長に対する無礼だったのだから謝罪する気はない、という立場にこだわったのだ。イ代表の言動が、逆にわいせつ被害者と国民に対する無礼だった、という点を全く認識できずにいるのだ。

 権力者が公の席で「不都合な」質問を受けるというのはよくあることだ。「答えたくない」と言ったり、何も言わずにその場を離れたりすることもひんぱんにある。だがイ代表のように、政治的責任が大きい人物が記者の面前で直接「侮辱」に近い暴言を口にするケースはほとんどなかった。一般人が誰かを「××の子ども」とののしったら、「侮辱罪」で処罰されかねない。まして、取材陣が公の席で党の対応の方向を質問したのに悪口で応じるというのは、さらに大きな誤りだ。イ代表の態度は、政権党の最高権力者として怖いものは一つもないという、傍若無人なものとしか映らない。

 野党からは「代表があれだから、所属議員も被害者に対する『2次加害』をためらいなく行っているのではないか」という声が上がった。誰にでも誤りはあり得る。しかし、その誤りを認めて謝罪しないのなら傲慢(ごうまん)となる。反省しない政治勢力は長続きしない。

チェ・ヨンジン政治部記者

ホーム TOP