韓国の与党「共に民主党」の金太年(キム・テニョン)院内代表は最近、「野党の反対で『12・16不動産対策』の後続立法が国会を通過できなかった後遺症が、今の市場過熱として表れた」と発言した。その法案が「魔法のつえ」なのかどうかはよく分からないが、それほど急を要したのであれば、汎(はん)与党圏が「ファストトラック」までして通過させた選挙法・高位公職者犯罪捜査処法(公捜処法)のように処理できただろう。なぜ今になって野党のせいにするのか、よく理解できない。

 不動産問題に関しては、お決まりのメニューである「前政権のせい」も後を絶たない。国土交通部(国土部。省に相当)の金賢美(キム・ヒョンミ)長官は「(朴槿恵〈パク・クンへ〉政権時代の)2014年に規制を緩和し、不動産市場の上昇期に差し掛かった」と発言した。法務部の秋美愛(チュ・ミエ)長官は「朴正煕(パク・チョンヒ)開発独裁時代以来、腐敗権力と財閥が癒着して土地商売をやった」として、不動産問題は「文在寅(ムン・ジェイン)政権の国土部がつくったものではない」と主張した。

 だが過去の世論調査資料を見ると、韓国国民の「不動産欲」は盧武鉉(ノ・ムヒョン)・文在寅政権時代に燃え上っていた。韓国ギャラップの2001年の調査では、「最も有利な財テク方法」として銀行の積み立て(59%)が不動産(26%)を圧倒していたが、盧武鉉政権後半の06年の調査では不動産(54%)が銀行の積み立て(28%)を大きく上回った。盧武鉉政権になって住宅価格の暴騰により不動産に対する関心が急激に高まった、というのが調査の結果だ。不動産への選好度は、朴槿恵政権時代の14年末には38%まで下がったが、文在寅政権下の18年初めには再び49%に上昇し、最近では55%とさらに高まった。

 与党側の「メディアのせい」も、いちいち羅列するのが大変なほどだ。文大統領は新年の記者会見で「不動産対策を発表するなりメディアで『駄目だ』と言うのであれば、きちんと防げるはずがない」と発言した。イ・ヘチャン代表の「ソウルは下品な都市」発言に関して、民主党は「メディアが前後の脈絡を省略して問題にした」と主張した。陳声準(チン・ソンジュン)議員は、「(韓国政府の政策でも)不動産価格は下がらない」という発言が物議を醸すと「歪曲(わいきょく)報道に遺憾を表する」とした。

 与党側が「他人のせい」にしている間に、民心は背を向けている。住宅価格を抑えたいとして切り出した「遷都カード」に対する視線もますます冷たくなっている。首都移転への賛成は、7月17日・18日に行われた民主党の独自調査では62%だったが、24日には54%(リアルメーター調査)、24・25日には49%(SBS放送調査)、28-30日には42%(ギャラップ調査)と、およそ10日間で20ポイントも落ちた。首都移転は国の均衡発展よりも、不動産の実情を覆い隠すための「免避用」だ-という世論が広まったからだ。

 米国の組織開発の専門家、ジョン・G・ミラーの著書『愚者は他人のせいにしてばかり』(邦題『QBQ 成功スイッチ!-人生をプラスに導く質問習慣』)では、「愚か者の代表的な症状は他人のせいにすること」だとして「何かをするどころか、言い訳と無責任で一貫している」と指摘する。さらにミラーは「国の指導者らが対立の原罪を他者になすり付けることは、国を不幸にしかねない」とも記している。韓国与党の国政責任者がしっかり目に留めるべき記述だ。

洪永林(ホン・ヨンリム)世論調査専門記者

◆世界最高の国ランキング1位はスイス、韓国は20位、日本は?

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