凶悪事件を担当するベテラン刑事Aさんは、今年に入って「殺人犯」を追っていない。6月末、「殺人犯を捕まえるための張り込み」を2度行ったものの、ターゲットは「ハト殺害犯」だった。ソウル市麻浦区延南洞にある京義線のスプソク(林の中の意)公園の近くで、100匹あまりのスズメやハトが集団死した事件の犯人を捕まえるためだった。

 解剖のために農林畜産検疫本部に送られた死骸からは、微量の農薬成分が検出された。凶悪犯担当の刑事らが1週間、犯行現場に張り込んだものの、容疑者が再び現れることはなかった。1カ月にわたって近くの数十台に上る防犯カメラをチェックし、聞き込み捜査を行った結果、7月23日にB容疑者(69)を逮捕した。B容疑者は「道を歩いていたところ、ハトの排せつ物が体にかかり、カッとなって犯行に及んだ」と供述している。刑事Aさんは「ハト殺害犯を捕まえるため凶悪犯担当刑事たちが1カ月も付きっ切りだった」とし「今年初めに同警察署に赴任してから捜査した動物虐待事件だけでもすでに2件だ。その間、殺人事件は1度も担当していない」と述べた。

 強盗や殺人など凶悪犯罪を担当する刑事たちが最近相次いで動物虐待捜査を行っている。凶悪事件は減る一方で、動物関連の犯罪は増える一方だからだ。警察によると、動物保護法違反で捜査し、検察に起訴意見として送検した容疑者は2015年の264人から昨年は973人にまで増えた。ソウルのある警察署に勤める経歴5年目の刑事は「映画で見た凶悪犯の捜査を期待して刑事課に志願したが、現場に来てみたところ動物虐待捜査が多くて驚いた」とし「凶悪犯対策チームを『動物捜査専門刑事』と冗談交じりでなじる声も聞かれる」と話す。

 ソウル市冠岳区警察署の凶悪犯担当刑事たちは最近、ネコ虐待犯の捜査に追われている。今年5月22日早朝4時30分ごろ、冠岳区蘭谷洞のある福祉館で、妊娠中のネコが腹部に大けがを負う事件が発生したためだ。同じ時期に、冠岳区新士洞のある駐車場では、右後ろ足を負傷した子ネコが死んだ状態で発見された。同事件には凶悪犯担当1チームが投入され、2カ月にわたって捜査を行っている。警察関係者は「CCTV(監視カメラ)の分析などを通じて容疑者を特定するために全力を挙げているが、捜査は容易でない」という。

 動物保護団体側からは、動物専門の警官を常駐させるべきだといった声も出ている。動物自由連帯のチョ・ヒギョン代表は「動物犯罪の深刻さを考慮すると、米国にあるアニマル・コップ(animal cop)のように専門性を備えた人材が必要だ」と訴える。実際、京畿道は2018年11月、民生司法警察団内に動物虐待犯担当のチームを設置し、動物関連犯罪の取り締まりを強化している。

イ・ヘイン記者

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