現政権で青瓦台の初代国民疎通首席秘書官を務めた尹永燦(ユン・ヨンチャン)現・国会議員=共に民主党=の「カカオ・ニュース編集介入」メッセージ騒動が政府・与党の「ポータルサイト統制」疑惑に発展している。野党では9日、尹永燦議員がインターネットニュースのポータルサイト・サービスを運営する企業「カカオ」に圧力をかけてニュース編集を思い通りに変えようとした状況が明らかになったとして、「尹永燦議員が青瓦台首席秘書官をしていた時もこのようなポータルサイト統制が頻繁にあった」との疑惑を取りざたした。特に、尹永燦議員が野党院内代表の演説に関する記事の配置(レイアウト)を問題視したことから、「以前は『保守政権は公営放送を掌握している』と攻撃していたのに、自分たちが政権に就くや放送掌握にとどまらずポータルサイトの検閲までしようとしている」と指摘している。

 尹永燦議員は8日、国会本会議場で、野党・国民の力=旧・未来統合党=の朱豪英(チュ・ホヨン)院内代表の演説を聞いている最中に自身の補佐陣に対し「カカオに強く抗議してください」「カカオ、あんまりです。こっち来いと言ってください」というメッセージを相次いで送った。朱豪英院内代表の演説に関する記事が、カカオ運営のポータルサイト「ダウム」のメインページにリアルタイムで掲載されたことを問題視するということだ。尹永燦議員は韓国最大のポータルサイト「ネイバー」の元副社長で、ポータルサイト事業者などを監査対象とする国会科学技術放送通信委員会の委員を務めている。

 政界関係者の間では、尹永燦議員の今回の行動が朴槿恵(パク・クネ)政権時の李貞鉉(イ・ジョンヒョン)青瓦台広報首席秘書官による「KBS外圧問題」と変わらないとの指摘も出ている。李貞鉉元首席秘書官は2014年4月、KBSが旅客船「セウォル号」沈没事故に対する政府対応と救助活動の問題点をメインニュースとして取り上げると、当時のKBS報道局長に電話をかけ、「ニュース編集から(記事を)外してほしい」と要請した。これが発覚して李貞鉉元首席秘書官は起訴され、罰金1000万ウォン(現在のレートで約90万円)の刑が確定した。ポータルサイトのニュースサービス機能が地上波放送に劣らない影響力を行使している状況下で、与党の現役議員がポータルサイト関係者に抗議性の圧力を行使しようとしたことは、李貞鉉元首席秘書官のケースと同じだということだ。

 尹永燦氏は5年前の2015年10月、ネイバーの対外担当取締役だった。同氏は当時、国会の国政監査に出席して、ポータルニュースの配置に関して、「配置の一つ一つが報道機関の記事に対する審議に行くしかない」「言論の自由を委縮させる可能性がある」と語った。当時与党だったセヌリ党=現・国民の力=が「ポータルサイトは政府・与党にだけ批判的」と公正性を問題視したことに対する答弁だった。尹永燦氏は当時、ポータルのニュース配置は公正に行われているという趣旨で言った。ほぼ同じ時期、民主党は「ポータルサイトを脅してインターネット記事編集権を検閲するという姿勢は、報道指針で報道機関を統制していた軍部独裁時代を連想させる」というコメントも出している。

 その尹永燦議員は前日、自分のテキストメッセージについて、「共に民主党の李洛淵(イ・ナギョン)代表演説の時と比べて公平性に問題があるのではないか調べようとしたもの」と述べた。尹永燦議員は騒動が広がるや、「私の間違いだった」と謝罪しながらも、重ねて「ニュース編集アルゴリズムの客観性と公正性を問おうとしたもの」と説明した。しかし、誰よりもポータルサイトのアルゴリズムをよく知る尹永燦議員が、ポータルサイトのニュース編集アルゴリズムを問いただそうとしたのは理解しがたいとの指摘が出ている。野党では「与党は『公営放送を事実上、親政府放送局にした』と批判されてきたのに、今やポータルサイトに掲載された第1野党院内代表の記事1件を口実にポータルサイトまで掌握しようとしている」と言った。

 朱豪英院内代表は「第5共和国(全斗煥〈チョン・ドゥファン〉政権)時代の報道指針がよみがえったような気がする」とコメントした。国民の力メディア特別委員会は同日、尹永燦議員の議員辞職を要求した。特別委員会は尹永燦議員が前日、カカオ幹部に直接電話をかけて圧力を加えたと主張している。尹永燦議員とカカオ側はそういうことはなかったと言った。同党の朴大出(パク・デチュル)議員はポータルサイトの代表と役職員も「金英蘭(キム・ヨンラン)法(不正請託禁止法)」の不正請託禁止対象に含まれるという内容を盛り込んだ「尹永燦防止法」を発議した。

◆世界報道自由度ランキング韓国42位、米国45位、日本は?

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