文在寅(ムン・ジェイン)大統領は23日、疾病管理庁の鄭銀敬(チョン・ウンギョン)庁長に「人類にインスピレーションを与えた」と絶賛した。

 文大統領は同日、米時事週刊誌「タイム」が鄭銀敬庁長を「世界で最も影響力のある100人」に選んだのを受け、同庁長の紹介文をタイム誌に寄せた。青瓦台は「タイム誌が文大統領に紹介文を要請してきたので送った」と説明した。文大統領はこの文で、「新型コロナウイルス流行の状況下で、韓国の防疫は世界の模範になり、鄭銀敬庁長は防疫の最前方で国民と真摯(しんし)にコミュニケーションを図り、K防疫を成功に導いた」「同庁長の誠実さこそ、世界各地で新型コロナウイルスに対抗する数々の『鄭銀敬』たちに、そして人類全員にインスピレーションを与える話となるだろう」と述べた。

 文大統領は11日、鄭銀敬庁長に任命状を渡すため、異例なことに自ら疾病管理庁を訪れた。そして、同庁で「世界で模範と認められたK防疫の英雄」と言った。鄭銀敬庁長が文大統領の後ろで90度に腰を曲げてお辞儀する写真もあった。鄭銀敬庁長は同日、「タイム100」に選ばれたことについて「新型コロナウイルスの克服に全力を尽くす」と短く感想を述べた。

 政界では、「文大統領は新型コロナウイルス防疫を指揮する鄭銀敬庁長に対し、励ましを通り越して、過度の『英雄化』をしているのではないか」と指摘する声が上がっている。まかり間違えば防疫を「政治イベント」に変質させる可能性があるということだ。「鄭銀敬庁長は先手を打って誠実にブリーフィングをしてきた」と評価されているが、その一方で過度に個人の権利を侵害したり、特定の集団に対して過剰対応があったりしたという批判もなくはない。

 文大統領の絶賛が鄭銀敬庁長に対する感謝の表れを超えて、一種の自画自賛と見られるかもしれないとの声もある。与党の一部からは「鄭銀敬庁長を来年のソウル市長候補として検討しているのではないか」という話まで出ている。朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長のわいせつ行為・セクハラ(性的嫌がらせ)疑惑があったため女性候補の方が有利で、野党・国民の力=旧・未来統合党=でも尹喜淑(ユン・ヒスク)議員など女性候補が取りざたされているからだ。「鄭銀敬英雄化」はそのための布石ではないかということだ。

 しかし、与党関係者は「鄭銀敬庁長の労苦に対する励ましを政治的に解釈してはいけない」「全世界が絶賛するK防疫の価値を知らしめるもの」と話す。戦争中の将軍を選挙に出せば逆風が予想されるのに、そんなことができるかということだ。

 一方、青瓦台は「タイム100」について伝える際、「鄭銀敬庁長は韓国人で唯一選ばれた」と述べた。だが、これは韓国映画『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督が同じ「タイム100」に含まれているという事実を見落としたものだった。これに対する批判が起こると、青瓦台は「二日前、タイム誌に確認した結果、鄭銀敬庁長が唯一の韓国人だという最終回答をもらい、タイム誌が100人のリストを公開していなかったため、確認する方法がなかった」と釈明した。

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