光復(日本の植民地時代からの解放)75周年が過ぎた今も、反日民族主義は続いている。文在寅(ムン・ジェイン)政権の「官制民族主義」により韓日関係は崖っぷちに立たされた。市民社会は、日本帝国主義の残滓(ざんし)清算を掲げて中学、高校の校歌を変更したのに続き、幼稚園という名称を幼児学校に変えようという動きが盛んだ。政権支持率の絶対兵器である官制民族主義は、民心に根差した反日感情と爆発的な相乗作用を呼び起こしている。反日民族主義を批判すれば、土着の倭寇というレッテルが貼られ、やがて生き埋めにされる。

 「150万人に上る親日派を全て断罪しなければ、この国に未来はない」―「民族文学界の巨匠」趙廷来(チョ・ジョンレ)氏の言葉だ。10月12日に行われた記者懇談会で、同氏は「民族の精気のために反民族特別委員会を復活させ、民族反逆者を処罰すべきだ」と強弁した。趙廷来氏は単なる小説家ではない。彼の『太白山脈』は860万部も売れ、超ベストセラーとなっている。『アリラン』(410万部)と『漢江』(305万部)まで韓国近現代史の大河小説3部作は、実に1600万部も売れた。文学的成就とは別に、これら書籍の天文学的販売数は趙廷来氏の小説が韓国人の心に響くものがあったということを意味している。反日民族主義の政治的再構成こそ成功の秘訣(ひけつ)なのだ。

 「民族とは想像された共同体」(imagined community)という主張がある。「民族が民族主義をつくったのではなく、民族主義が民族をつくった」というのだ。血統と言語を共有する5000年の白衣民族を誇る韓国人には驚くべきことのように聞こえる。長期にわたって持続した血統、言語、文化の上に建設された韓国民族主義と、近代の産物である西洋民族主義を平面的に比較するのは難しい。しかし、民族主義が民族を呼び起こすというのは明白な事実だ。檀君神話は、モンゴルの侵略に苦しんだ高麗末期に登場したものだが、これが韓民族のルーツとされている。偉大な韓民族の上古史をつづった偽書『桓檀古記』は日本の植民地時代に「発見」される。「趙廷来氏の行動」は民族と民族主義が歴史的に再構成された政治談論であることを立証している。

 北朝鮮問題も感性的な民族主義が主流となっている。北朝鮮労働党創建75周年記念閲兵式の筋肉自慢でも、文在寅政権は金正恩(キム・ジョンウン)委員長のリップサービスによって一喜一憂する。しかし、大韓民国を焦土化する北朝鮮の核兵器と「愛する韓国の同胞たち」を慰める金正恩委員長の民族主義の修辞は、正反対の概念だ。市民社会は「北朝鮮は恐るべき軍事力の拡大により韓国人の生命と財産を狙っている」という現実から目を背けている。「まさか北朝鮮が核で同族を攻撃することなどあろうものか」といった「同民族」に対する願望思考が、金正恩委員長による韓半島(朝鮮半島)統一戦略を見事なまでに覆い隠している。

 反日感情の縦糸と従北情緒の横糸が韓国民族主義を歪曲(わいきょく)している。北朝鮮が日本植民地時代の残滓をなくし、民族史的正統性でリードしたという偽りの歴史観が民族主義を汚染している。感傷的な民族主義は、厳しい国際政治に対する冷徹な認識を妨げる。21世紀の新冷戦時代を迎え、朝鮮半島は米中の帝国覇権競争の最前線となっている。民主主義と市場経済を共有した韓日間の相互協力は、「帝国中国」の無限なる膨張から韓国の主権を守る合従連衡の国家戦略資源だ。即物的な反日感情を超え、冷静な克日と用日が新たな韓国民族主義のキーワードにならなければならない。

 北朝鮮は、われわれが思っている韓民族ではない。自ら「金日成(キム・イルソン)民族」を宣布して久しい。世界5大核保有国である国連安保理常任理事国に次ぐ核戦略国であることを実証した北朝鮮の軍事崛起(くっき)により、南北体制の競争は全く新しい局面へと突入した。朝鮮半島の戦略構図の重大な変換期に直面しても、空虚な終戦宣言に執着する文政権の従北民族主義は、国を害する妄想だ。停戦協定と韓米同盟に基づいた停戦体制は、朝鮮半島の「事実的・法的平和」を70年近く支えてきた。冷酷な国際政治の現実と力の力学に背を向けるとき、南北が共存する朝鮮半島2国体制の樹立は不可能となる。韓国戦争(朝鮮戦争)は、情熱的民族主義が平和どころか戦争をもたらすといった教訓を与えている。

 反日・従北民族主義は、国と市民的自由を脅かす。反日民族主義は時代錯誤的であり、従北民族主義は歴史の反動だ。しかし、民族主義がつくり上げた「国民国家」は人類の厳然たる現実であるため、開かれた民族主義を育て上げる以外には代案がない。血統と習慣に縛られた種族的反日・従北民族感情は、歴史の退行にすぎない。種族的限界を振り切る市民的民族主義であってこそ、韓国民族主義が復活するのだ。反日・従北を超えて克日・克北に向かうとき、道が開かれる。光復75周年に実体もつかめない親日派という言葉を持ち出すのは、自由と正義の共和制の敵にすぎないのだ。

ユン・ピョンジュン教授

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