故・李健熙(イ・ゴンヒ)会長は2012年「3年以内にカメラで1位を取れ」と指示した。サムスン電子は韓国の市場で、ミラーレスカメラでソニーに次いで2位まで上がったが、世界のカメラ市場でキヤノン、ニコンなど日本の伝統的な強者に追い付くには力が及ばなかった。

 サムスン電子は2013年末の組織改編で、デジタルイメージング事業部を無線事業部傘下に統合してイメージング事業チームとして再編し、蓄積してきた光学技術を、スマートフォンの独自機能を具現化するために使用した。

 現在のサムスン電子は、失敗したカメラ1位への挑戦に代えて、新たな目標に向かって走っている。「スマホカメラ時代」の核心部品であるイメージセンサーで世界1位の座に着くという目標だ。イメージセンサーはスマートフォンのカメラのレンズから入って来る光をデジタル信号に変換し、イメージとして作り上げる半導体だ。

■「人間の目をしのぐ6億画素への挑戦」

 サムスン電子は昨年8月、世界で初めて1億800万画素のモバイル向けイメージセンサー「アイソセルブライトHMX」を発表した。イメージセンサー市場をリードするソニーより先に「1億画素」の壁を破るという快挙だった。サムスン電子は当時、0.8マイクロメートル(100万分の1メートル=1000分の1ミリ)サイズのピクセルを適用したが、昨年5月に発表した6400万画素の製品よりも画素数が1.6倍以上増えた。

 サムスン電子は今年5月、DSLR(デジタル一眼レフカメラ)水準の超高速自動焦点機能を支援する5000万画素のモバイル向けイメージセンサー「アイソセルGN1」を発売した。先月には1億800万画素の「アイソセルHM2」など0.7マイクロメートルのモバイル向けイメージセンサー4種を発表し、超小型ピクセル時代の幕を開けた。0.8マイクロメートルに比べてイメージセンサーのサイズが最大15%小さくなり、スマートフォンのカメラ部分が出っ張る問題を解決することができる。最新のスマートフォンに求められるのが薄型デザインと高画素カメラという時代に、技術力で市場を開拓する戦略だ。

 サムスン電子が超小型ピクセルのイメージセンサーを相次いで発表したが、これを支えたのはナノメートル単位の超微細な半導体をつくる製造工程の技術力と開発ノウハウだった。イメージセンサーのピクセルサイズが小さくなるほど集光面積が小さくなり、撮影イメージの品質が低下するが、サムスン電子はピクセルの光学構造を改善し、新素材を適用して光の損失とピクセル間の干渉減少を最小化する特許技術「アイソセルプラス」を適用した。

 サムスン電子システムLSI事業部センサー事業チームのパク・ヨンイン・チーム長(副社長)は今年4月、サムスン電子のニュースルームで紹介された寄稿文で「半導体メモリー1位のDNAと世界最高の工程技術を持つサムスン電子が『より小さく性能の良いイメージセンサー』を作っている」「人の目をしのぐ6億画素のイメージセンサーを含む革新のために引き続き挑戦していく」と意欲を見せた。

■DRAMラインを転換し、市場の需要に対応

 市場調査会社ストラテジー・アナリティクスによると、今年上半期の世界のスマートフォン用イメージセンサー市場で、ソニーはシェア44%で1位(売り上げ基準)、サムスン電子は同32%で2位だった。昨年上半期はソニーとサムスン電子のシェアはそれぞれ50.1%と29.0%だった。今年上半期の両社のシェアは12ポイント差で、昨年上半期(21.1ポイント)に比べ10ポイント近く縮まった。

 サムスン電子は高性能イメージセンサーでシャオミ、OPPO、Realmeなど中国のスマートフォン企業を捉えている。サムスン電子が発表している高級スマートフォンにもイメージセンサー技術が使われている。例えば今年初めに発売された「ギャラクシーS20 ウルトラ」には1億800万画素のカメラが搭載されており、最大100倍のズーム撮影が可能だ。

 サムスン電子は既存のDRAM生産ラインをイメージセンサー用に転換し、市場に対応している。2018年には華城のDRAM第11生産ラインをイメージセンサー用に転換すると発表した。イメージセンサーの需要増加に伴って生産を拡大すれば、今後シェアが高まるとの見通しも示されている。

 電子業界の関係者は「サムスン電子が高画素市場で躍進すれば、ソニーに追い付く時期が早まる可能性がある」として「攻撃的な投資と技術開発によって『イメージセンサー世界1位』という目標に近づいている」と話した。

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