文成赫(ムン・ソンヒョク)海洋水産部長官は今年8月、HMM(旧・現代商船)の4-6月期業績発表を自ら行った。当時HMMは21四半期ぶりに黒字を出した状況だった。「民間企業の業績発表に政府が関与するのはなぜか」という質問に、文成赫長官は「韓国の海運産業の安定性や国際的な信頼度を引き上げようというのが目的だ」と答えた。しかし、「HMMの実績が改善されたから、政府はそれに乗っかろうとした」と非難の声が上がったのも事実だ。

 ところが、乗っかろうとしたタイミングが早すぎたようだ。HMMの実績が好転したとは言え、政府の海運業再建はまだ成功していないからだ。別の見方をすれば、ようやく試験台に載ったとも受け取れる。

 海運業は支援の性格が強い業種だ。船舶・航海用語には、海運業の定義について「直接の効果のほかに、造船・工業など関連産業の発展および輸出を促進し、経済成長を成し遂げ、国防力を補うなど、付随的な効果も多大で…」と書かれている。つまり、海運会社も企業なので海運会社自体の実績が重要だが、それに劣らず、韓国の輸出産業を支援できてこそ成り立つという点がカギなのだ。

 しかし、現時点で見ると、悲惨な失敗だ。ある化粧品会社の代表取締役は膨大な赤字を甘受して物品を飛行機に載せることが増えたという。到底、船が見つからない状況だが、顧客を失うのを恐れて、大幅な逆マージンを甘受しているのだ。この代表取締役は「物があり、物を買うという人がいるのに船が見つからず、破産しかねない状況だ」と涙ながらに訴えている。朴映宣(パク・ヨンソン)中小企業ベンチャー部長官もソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「フェイスブック」に、「注文が集まっているのに船がなく輸出できない」という、ある化粧品メーカーの状況を書いている。

 事実、この状況は前政権の海運業構造改革の失敗によるものだ。韓進海運破たんで韓国は海運の競争力を失った。2010年に5位だった韓国の輸送サービス輸出順位は2019年に10位圏外となり、韓国の海運会社のアジア-米国路線占有率も12.2%から7%に下がった。

 さらに大きな問題は、1社のみが残ったために、資本主義の長所である競争とけん制の効果が今となっては期待できないという点にある。HMMは今年4月、世界3大海運アライアンスの一つである「ザ・アライアンス」の正式メンバーとして合流した。しかし、ザ・アライアンスはドイツの「ハパックロイド」と日本の「オーシャン ネットワーク エクスプレス(ONE)」が主導している。海運アライアンスの利潤構造に基づいて戦略的に航路を配置するため、韓国中心の航路運営は容易でない。かつての韓進海運と現代商船はグローバル4大海運アライアンスである「CKYHEアライアンス」「G6アライアンス」に所属していた。両社が今もあったとしたら、現在の船舶難に対して、もっと迅速に対応できたことだろう。

 韓進海運問題は過去の出来事であり、前政権の失敗だ。しかし、現在の船舶不足を放置すれば、現政権の海運政策も前政権の失敗に劣らない失敗として記録されるだろう。HMMの実績を見て笑ってばかりはいられないはずだ。

アン・ジェマン財界チーム長

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