日本政府に対して慰安婦被害者に賠償するよう命じたソウル中央地裁の8日の判決について、政府関係者は同日、「率直に言って韓日関係は答えが見えない」と語った。徴用賠償問題も解決の糸口が見つかっていない中、それに劣らない大きな宿題が与えられたということだ。外交部は内部的に「訴訟却下」の可能性に重点を置いていたが、予想外の判決に困惑しているという。慰安婦被害者に対する国民の声援とは別に、この判決は韓日関係にとって突出した変数になった。菅義偉首相は「国際法上、主権国家は他国の裁判権には服さない」「断じて判決を受け入れることはできない」と述べた。日本外務省も南官杓(ナム・グァンピョ)駐日大使を呼び出し、「日本政府として断じて受け入れられない」と抗議した。

■関係改善努力が振り出しに戻る可能性

 今回の慰安婦判決で、両国関係改善のため最近水面下で進められていた努力が再び振り出しに戻るかもしれないとの懸念が出ている。韓日関係は2018年10月の大法院による強制徴用賠償判決以降、悪化の一途をたどってきた。日本による輸出規制、韓国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)一時停止など報復措置が続き、破たん寸前まで行った。日本は「徴用問題の解決なしには首脳会談もない」とまで通知してきたという。

 しかし、最近は流れが微妙に変わってきていた。文在寅(ムン・ジェイン)政権は東京五輪を利用して2018年の平昌冬季五輪時と同じ平和イベントを構想しており、日本でも五輪を成功させるため韓国の協力を必要としている。目的は異なるが、両国関係をこのまま放置してはならないという共通認識があるということだ。両国大使の同時交代が関係改善のきっかけになるとの期待もあった。姜昌一(カン・チャンイル)氏は8日、駐日大使に正式に任命され、駐韓国大使に内定していた相星孝一氏も今月中に赴任する予定だ。

 慰安婦判決はこうした微妙な時期に下された。今回の判決は、来週の別の慰安婦被害者20人が日本政府を相手取り起こした訴訟にも直接的な影響を与えるものと思われる。政府は、司法府の判決に介入しないという原則を守りつつも、慰安婦問題を解決する方法がこれといってないため、頭を痛めている。

■支持率回復のため「強攻」の可能性も

 最近、両国の指導者の支持率が下降局面に入っていることも、関係改善をいっそう困難にする要因になり得る。韓日の歴史問題は国民感情が鋭くぶつかり合う事案だ。このため、両国政府とも「妥協」よりも「強攻」の方が国内政治的に助けとなる場合が多い。このところ文在寅政権の国政遂行支持率は過去最低水準まで下がっており、菅政権も新型コロナウイルス対応の失敗などで発足3カ月にして支持率が30ポイントも急落、辞任の見通しまで取りざたされている。ソウル大学のパク・チョルヒ教授は「両国の政権が国民の不満を外に向けようとして、韓日関係に関して強硬な姿勢に出る可能性も排除できない」と言った。

■今後の手続きはどうなる?

 日本政府は今回の判決について「控訴も拒否する」としている。韓国の裁判所の判決自体を認めないということだ。控訴をしなければ、一審判決がそのまま確定する。この場合、訴訟で勝った慰安婦被害者たちは韓国国内の日本政府の資産に対する差し押さえ申請をすることになる。いわゆる「強制執行」が始まるということだ。

 しかし、日本側が裁判所の「強制執行」推進に抗告などの方法で異議を唱えれば、実際に賠償金を受け取るまで何年もかかることもある。また、今回の慰安婦訴訟の差し押さえ対象は日本企業ではなく、日本政府の資産なので、差し押さえがいっそう困難だとの見方も出ている。ある国際法の専門家は「外交関係に関するウイーン条約第22条第2項には『各国政府は外国公館の安寧の妨害を防止するための責務を有する』という内容が書かれている。日本の資産差し押さえのうち、相当数が『日本公館の安寧の妨害』と解釈される余地もある」と言った。共同通信は「(韓国が)日本政府の資産の差し押さえに出れば、日本の報復措置は避けられないだろう」と報道している。

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