ソウル中央地検の李盛潤(イ・ソンユン)地検長が金学義(キム・ハクウィ)元法務部次官に対する違法な出国禁止措置に関する捜査を圧力で中止させたという疑惑が浮上し、検察周辺からは「職権乱用など違法行為で捜査すべき事案だ」との声が上がっている。李検事長はこの事件にとどまらず、「政権に絡む主な捜査ごとに口封じをしてもみ消した」とする批判を受けている。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領の慶熙大の後輩である李地検長は現政権発足以降、いわゆる「検察ビッグ4」のうち3つの要職を順に務めた。大検察庁反腐敗強力部長、法務部検察局長、ソウル中央地検長を相次いで務め、むしろ主な捜査を妨害する役割を果たした。

 李地検長を巡っては、大検察庁反腐敗部長時代の19年7月、大検察庁過去史真相調査団のイ・ギュウォン検事、法務部の出入国担当公務員が偽の事件番号を使い、金元次官を出国禁止にした事件に対する安養支庁の捜査を妨害したとする情報提供があった。

 法務部検察局長に栄転した李地検長は19年9月、チョ・グク前法務部長官に対する捜査当時、幹部らに対し、「尹錫悦(ユン・ソクヨル)検察総長を除く特別捜査チームを結成しよう」と提案していたことが分かり、検察内外から批判を受けた。

 2020年1月の秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官就任直後、ソウル中央地検長に就任。過去1年間は政権に関する捜査をもみ消し、政権の意向に沿った捜査を押し通したとして、法曹界の批判が絶えなかった。

 昨年1月の青瓦台による蔚山市長選挙介入疑惑を巡り、尹錫悦検察総長をはじめ、大検察庁幹部と中央地検幹部が集まり、起訴の是非を協議する際、李地検長だけが唯一起訴に反対だったという。しかし、検察は宋哲鎬(ソン・チョルホ)蔚山市長、白元宇(ペク・ウォンウ)元青瓦台秘書官ら13人を一斉に起訴した。

 捜査班は昨年4月の総選挙以降、追加捜査を行い、李震錫(イ・ジンソク)現青瓦台国政状況室長も起訴すべきだと報告したが、李地検長はそれを黙殺したとされる。任鍾晳(イム・ジョンソク)元青瓦台秘書室長、李光哲(イ・グァンチョル)青瓦台民情秘書官に対する捜査は事実上中断状態だ。

 尹錫悦検察総長に対する懲戒の根拠となった「チャンネルA事件」の捜査班は事実上、李地検長に抵抗していたことも分かった。捜査班は昨年7月、チャンネルA記者を強要未遂の罪で起訴したが、韓東勲(ハン・ドンフン)検事長を共犯としなかった。先月には100ページを超える分量で韓検事長を嫌疑なしとする報告書を提出したが、李地検長は決裁を拒否しているという。これについて、捜査班の検事全員が李地検長を訪ね、集団で決裁を求める事態に発展したという。

 昨年6月に金融監督院からオプティマスファンド詐欺事件の捜査を依頼された大検察庁は、特捜部に相当するソウル中央地検反腐敗操作部に事件を割り当てようとしたが、李地検長は一般の告訴・告発事件を処理する調査部に事件を割り当てた。3カ月後の昨年9月、与党関係者のロビー疑惑が記されたオプティマスの内部文書が公表されたが、中央地検はそれを知りながら隠蔽した疑惑も持たれている。李地検長は後から事件を経済犯罪刑事部に再割り当てしたが、これといった結果は出ていない。

 李地検長は昨年4月、「チャンネルA事件」を巡り、虚偽事実を流布した疑いで告発された崔康旭(チェ・ガンウク)国会議員(開かれた民主党)に対する捜査を9カ月にわたり封じたとの指摘もある。捜査班が最近、遅ればせながら崔議員に対する捜査に着手した。

 一方、政権の意向に沿った捜査は無理に推し進め、後輩検事の反発に直面した。李地検長は昨年10月、過去に嫌疑なしとされた尹総長の姻戚に関する事件に反腐敗部の捜査官を大挙投入しようとして、内部対立を招いた。羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)元国会議員(国民の力)の子女を巡る疑惑も李地検長が捜査班に起訴するよう圧力をかけたとされている。ただ、捜査班は先月、羅元議員を巡る13件の告発事件を全て嫌疑なしで処理した。

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