学校でのいじめや暴力被害を告白する、いわゆる「暴Too(暴力+MeToo)」がプロバレーボールを中心に韓国スポーツ界に広がっている。昨年6月に自殺したトライアスロン選手チェ・スクヒョンさん事件が指導者による暴力の実態を告発したものだとすれば、今度は先輩・後輩や仲間たちの間のいじめを告発している点が違いだ。被害者は十数年前のことに言及しているが、加害者は今、世論の袋だたきに合う。「分別がなかった10代のころのことだ」と言い訳してもどうしようもない時代だ。

■「双子たち、10年前のあの出来事を覚えている?」

 プロバレーボール選手で双子のイ・ジェヨン、ダヨン姉妹(24)=興国生命=の「暴Too」は10日未明に始まった。姉妹と同じ全州槿暎中学校のバレーボール部だったという被害者Aさんは「10年前のことだから忘れようと思ったが、加害者たちは自分たちの過去を忘れてしまったようだ」として、21項目にもわたる被害事実をインターネット上で暴露した。常習的な暴行や暴言のほか、ナイフで脅迫したり、金銭を常習的に恐喝したりしていたという衝撃的な内容も含まれていた。同姉妹は暴露の書き込みが掲載されてから16時間後、「分別のなかったころにやった無責任な行動のため、多くの方々を傷付けた」と頭下げたが、世論は冷ややかだった。姉妹のバレーボール界追放を求める請願が青瓦台国民請願サイトに寄せられ、所属チームの興国生命には懲戒処分を要求する声が殺到した。

 興国生命が「心身ともに不安定だ」という理由で姉妹の懲戒処分に生ぬるい姿勢を見せると、今度は別の被害者Bさんが13日、さらなる被害事実を暴露し、14日には保護者Cさんが「中学時代、双子たちは母親(1988年ソウル五輪女子バレーボール韓国代表チームのセッター、キム・ギョンヒ氏)の指示の下、2人だけでバレーボールをして、同年代の選手たちは運動もできず、いじめられてばかりいた」と証言した。すると、大韓バレーボール協会は15日、イ・ジェヨン、ダヨン姉妹の韓国代表資格を無期限はく奪すると発表、興国生命も同日、無期限出場停止を決定した。韓国バレーボール連盟(KOVO)は16日、緊急対策会議を開く。

 「暴Too」は男子プロバレーボールにも飛び火した。OK金融グループのFWソン・ミョングン(27)とシム・ギョンソプ(29)が中学・高校時代にした暴行の事実は、ネットを通じてあらためて取りざたされた。両選手は加害事実を認め、今シーズンの残りの試合に出場しないことになった。

 14日にはある人物が「中学時代、頭と足だけを床に付けて体を『くの字』に曲げて支える体勢にさせた後、ハングルを最後まで言わせたり、ボウルを涙・鼻水・ツバ・尿で満たすよう強要したりした人がいた」「彼の姿をテレビで見るのがつらい」とネット上に書き込んだ。首都圏に本拠地を置くチームの女子プロバレーボール現役選手D選手の名前がその加害者だとして挙げられている。

■被害生徒たち「合宿所が暴力の温床」

 専門家らは「当分の間、被害の告白が相次ぐだろう」と見ている。韓国エリート・スポーツ界に暴力がまん延しているという事実は以前から知られていた。しかし、メディア環境が変わり、被害者たちの対応方式にも変化が出てきた。竜仁大学柔道学科のユン・ヒョン教授は「加害者がスポーツ界のスターになってメディアの注目を浴びると、被害者のトラウマ(心的外傷)がひどくなる」「以前と違い、最近はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に1行書くだけでも世間に広まる。最近は加害者の謝罪する姿を見て、別の種目でも被害者が同様のケースを暴露する可能性がある」と話す。

 合宿生活が選手間の暴力の温床になっているという批判もある。指導者も知らないうちに選手たちがたたいたり、洗濯・掃除などの雑務を強要したりして、暴力が代々続いているという指摘だ。イ・ジェヨン、ダヨン姉妹も合宿所内での被害が頻発した。男子バレーボールも同様だ。当時の被害について、被害者Eさんは「松林高校バレーボール部時代、3年生の先輩Fに『歌を歌え』と強要されたが、1年生の私が応じないと、Fは2年生の先輩(ソン・ミョングン選手)をたたいた。その先輩(ソン・ミョングン)は私の睾丸が破裂するほど暴行し、私は手術を受けた」と暴露した。

 国家人権委員会が2019年12月に発表した「学生選手人権侵害実態全数調査結果」によると、中学生の21.5%、高校生の23.7%が身体への暴力を経験したという。合宿の経験があると、暴力の被害者は約10ポイント増えた。被害者の証言の中には「先輩たちは合宿所で後輩をたたいてストレスを解消している」「圧倒的な実力を持つ『エース』がいじめをしたら、監督でも介入できない」という内容もあった。

 慶一大学スポーツ学科のチョン・ジギュ教授は「今回の事態を通じて、学校でのいじめや暴力は時効がない重罪であることを刻みつけ、社会全般の認識とシステム改善に導かなければならない」と強調した。

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