米マイクロソフト社の創業者であるビル・ゲイツ氏がアジアの複数メディアからの取材に応じ「韓国がカーボン・ニュートラルを達成するには原子力エネルギーが必要だ」との考えを示した。ゲイツ氏は「気候災害に直面すれば、コロナの数倍の犠牲が避けられないだろうし、これを阻止するためにも原子力を含む可能なあらゆる方法を動員すべきだ」とも指摘した。ゲイツ氏は2008年に新型原子炉の研究開発を行う「テラパワー」を設立し、ソジウム冷却高速炉など次世代原子炉の開発を進めてきた。

 ゲイツ氏の言葉はあまりにも当然の内容だ。原子力は太陽光や風力などとは比較にならないほど、効率的かつ大量のエネルギー生産が可能だ。韓国政府が廃炉にした月城1号機はその規模が小さいにもかかわらず、韓国最大の太陽光発電施設の25倍の電力を生産できるが、温室効果ガスや粒子状物質は排出しない。そのため世界的な気候科学者のジェームス・ハンセン氏やケリー・エマヌエル氏らも「原子力が気候変動に対応する唯一の実効的な代案だ」「世界は毎年115基の原発を建設すべきだ」と主張している。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権は脱原発とカーボン・ニュートラルを並行して達成するとしているが、これは前後のつじつまが合わない矛盾だ。太陽光や風力は現時点で韓国国内における電力消費の4-5%、エネルギー全体からすれば1%を供給しているにすぎない。カーボン・ニュートラルを達成するには、これまで電力を使用してこなかった工場、自動車、建物のエネルギーまで全て電気に転換なければならない。ゲイツ氏は「世界的に電力生産を2.5倍に増やし、それを全て脱炭素の電力で調達しなければならない」と主張している。太陽光や風力だけでこの膨大なエネルギーを供給するというのは妄想だ。

 ゲイツ氏は「今の世代の原発はそれ以外のいかなる発電施設よりも安全であり、開発中の次世代原子炉は安全度をさらに向上させた」と説明した。テラワット当たりの死者を見ると、石炭は24.6人だが、原発は0.07人にすぎないというのだ。今月13日に日本の福島県沖合を震源とする強い地震が発生した際、韓国与党・共に民主党では15日、原発の安全性を問題視する発言が相次いだ。しかし世界的に見ても地震によって原発の安全施設が損傷するとか、放射能が流出するといったケースは見られなかった。2011年の東日本巨大地震当時も福島原発は地震の際には確実にストップしたが、その後の津波で地下の非常用発電機が浸水したため事故が発生した。

 脱原発の影響で技術開発がストップすれば、韓国は次世代の原発開発競争からも脱落し、原子力の辺境国家に転落してしまうだろう。国の競争力は崩壊し、気候変動への対応に貢献できず、国民は大気汚染によって苦痛を受けるしかない。現政権は表向きは脱原発を主張しているが、背後では北朝鮮に原発を建設する問題を検討してきた。このままでは統一が実現した後も北朝鮮に電力を供給する手段がなくなってしまうだろう。

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