▲写真=ソウル市教育庁が平和統一教具として支援することを明らかにしたカードゲーム。韓国戦争(朝鮮戦争)発生後、逃げていた李承晩(イ・スンマン)政権が漢江の橋を爆破させ、数多くの兵士や市民を犠牲にし、釜山まで避難したと説明している。

 ソウル市教育庁が来月の統一教育週間(5月第4週)に支援することを発表した小中高校の平和・統一教育図書リストに、北朝鮮の核兵器開発や在韓米軍撤退要求を正当化したり、3代世襲を美化したりした内容が盛り込まれた本が多数含まれていることが確認された。また、李承晩(イ・スンマン)元大統領や脱北者たちをさげすむ教具や本なども支援リストに入れられ、論争が予想される。

 本紙と野党・国民の力所属の丁慶姫(チョン・ギョンヒ)国会議員がソウル市教育庁の教材リスト「教室に来た平和統一の包み」を入手・分析した結果、「北朝鮮の人々は自由と民主主義を謳歌(おうか)して暮らしていた」「北側の人民たちは金日成(キム・イルソン)主席と金正日(キム・ジョンイル)総書記に続いて、反帝・自主の価値を継承する指導者を探し、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が最もふさわしいと判断した」などと北朝鮮を一方的に美化した本が多数含まれていたことを28日に明らかにした。これはソウル市教育庁が提示した推薦図書36冊と教具22種類のリストで、学校が希望する種類と数量を選べば、100万ウォン(約9万8000円)を限度に教育庁が購入して送付してくれる。ソウル市教育庁は希望する学校の申込を受け付けて44校を選定、該当の学校は支援してもらった本や教具を使って来月から7月中旬までの間に教科授業や創造的体験活動の時間に平和・統一教育をすることになる。

 「北朝鮮体制を一方的に宣伝したり、韓国軍のベトナム民間人虐殺などを取り上げたりした本は教育的に適切ではない」という指摘もある。例えば、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時に青瓦台秘書官を務めた人物が書いた『私たち、一緒に暮らせるだろうか?』という本は「北側が開発した核兵器はそもそも攻撃用になり得ない」「北側は約束した宣言と合意に基づいて非核化手続きを実際に進めている」と主張している。この本はまた、「北の核問題の根本的解決策は米国が敵対的対北朝鮮政策を引っ込めることで、最終的には(休戦状態である韓国戦争=朝鮮戦争の)終戦宣言と平和協定を締結すれば、すべてが解決される」としている。「在韓米軍が撤退しても軍事的衝突状況は発生しない」「在韓米軍が撤退したら、防衛費分担金として策定されていた予算を本当に必要なところに使えるようになるだろう」とも書いている。

 支援図書の中には、「脱北者たちは生活のために南側に来たのであって、北側の体制に不満を抱いてやって来たケースは非常に珍しい」「南側に行けば定着支援金もくれるし、家もくれると言うので、惑わされて南に来ることになったもの」「脱北者たちは結局、資本主義の奴隷になるだろう」など、脱北者をさげすんでいるのと変わらない内容が含まれていた。南北対立を李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)政権のせいにし、北朝鮮の挑発行為を意図的に隠した本もある。『10代とする平和統一の話』という本は「李明博政権が北朝鮮に敵意をあらわにし、軍事的攻撃にまで言及した結果、南北間の武力衝突、金剛山での韓国人観光客殺害、開城工業団地での韓国人労働者抑留などの事件が後を絶たなかった」「2010年3月に天安艦事件が起きた」と述べた。韓国海軍哨戒艦「天安」の爆破沈没を「天安艦事件」と書き、挑発行為の主体が北朝鮮であることを隠したものだ。

 『私たちは統一世代』という本には、「(北朝鮮・平壌の)玉流児童病院は子どもの心臓病手術を3000件以上、すべて無償でしたというから、重病の家族がいるとお手上げの韓国の現実とは対照的だ」と書かれている。また、「金正日総書記の選択は、人民たちが指導者を失った悲しみを勇気に変え、金日成主席の志を継承するため、まい進することだった」「北の人々は、(北朝鮮側の江原道)洗浦郡に大規模牧畜団地を建設し、質の良い肉を存分に食べられるようになっただけでなく、新たな神話と誇りを作った」など、北朝鮮の宣伝メディアと変わらない記述が多数あることも分かった。『軍隊がなければ国が滅びるのか』『平和は初めてなので』など兵役拒否者が書いた本2冊も支援書籍リストに入れている。大学歴史学科教授だった丁慶姫議員は「左派寄りの歴史観と北朝鮮のニセの平和を児童・生徒に植え付ける本と教具を、国民の税金で購入して教育に使うのは深刻な問題だ」と指摘した。ソウル市教育庁は「多様な本や教具により平和・統一教育を支援するという趣旨で学校に選択権を与えたものだが、一部図書の内容に対する検証が不十分だった」「兵役拒否者の本などを支援書籍リストから外す」と明らかにした。

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