▲防弾少年団

 Kコンテンツ全盛の時代だ。アカデミー受賞で韓国映画史の新たな章を開いた映画『パラサイト 半地下の家族』から、世界の音楽ファンを魅了したKポップスター「防弾少年団」、日本や東南アジアでシンドロームを引き起こし、米国ワシントン・ポスト、英国BBC放送など海外有力メディアでも好評を博したドラマ『愛の不時着』に至るまで、韓国文化ソフトウエアのグローバル市場進撃はとどまるところを知らない。

 韓国エンターテインメント産業が優秀なKコンテンツを量産できるのは、二つのトップギアのおかげだ。ドラマ・バラエティー・映画・音楽などを直接企画・制作するコンテンツ企業と、これを載せて運ぶプラットフォーム企業だ。コンテンツ企業とプラットフォーム企業は、互いに必要不可欠な存在だ。コンテンツが面白くなければ、いくら良いプラットフォームがあっても客を引き付けることはできない。逆に、コンテンツが良くてもこれを売り出す市場、プラットフォームがなければエンターテインメント産業は発展できない。

 だがコンテンツ企業とプラットフォーム企業の関係は、常に良いものばかりではあり得ない。両者は消費者が支払う利用料を分配しなければならない関係だ。プラットフォーム企業は、共同の努力で稼ぎ出した収益の中からコンテンツ企業に支払う代価であるコンテンツ使用料を減らしてこそ、自分の取り分が増える。コンテンツ企業は、よく売れるコンテンツを持続的に生産する良き循環の構造をつくるため、投資財源になるコンテンツ使用料をきちんと受け取ることが先決課題だ。

 Kコンテンツ産業が大きくなる中、コンテンツ企業とプラットフォーム企業は対立を起こし続けている。音楽産業だけを取り上げてみても、音源使用料の問題は長年にわたって「火中の栗」だった。歌手や作曲家など音源権利者は、音楽プラットフォームが過度の分け前を占めているとして、創作物の価値をきちんと認めてほしいという要求を絶えず行ってきた。その結果、文化体育観光部(省に相当)は音源伝送使用料徴収規定を改正し、かつては売り上げ全体の60%という水準だったプラットフォームの取り分を2013年には40%、19年には35%まで下げた。

 映画業界も、2013年に繰り広げられた綱引きを経て、劇場チケット販売収益を配給会社と劇場とで分ける比率を調整した。従来は消費者が支払った金額の50%を劇場が持っていったが、議論の末、劇場の取り分を韓国映画の場合は45%に下げることとした。こうした流れは、ここ数年で急成長したウェブ漫画(ウェブトゥーン)業界や動画サイト「ユーチューブ」でも同様だ。これらの市場においてコンテンツ提供者は、売り上げ全体の半分を上回る50-70%ほどを自分の取り分とする。よく売れるコンテンツを作った人に十分な報奨を与えることがエンターテインメント産業を支える根幹、というコンセンサスが生まれた結果だ。

 しかし、エンターテインメント産業の中で最も規模が大きい放送業界は、こうした流れと懸け離れている。消費者がリアルタイムで数百のチャンネルを見ようと支払っている有料放送料金のうち、番組を提供する各コンテンツ会社に与えられる金額は、2019年現在で32.8%という水準だった。音楽産業と比べると、売り上げ全体に占めるコンテンツ企業の取り分は半分にも達しない、ということになる。

 しばしば物議を醸すドラマやバラエティーの番組中の広告・協賛問題も、不合理な収益配分構造に由来している側面が大きい。プラットフォーム企業からコンテンツ投資金額の3分の1しか受け取れない制作会社としては、残りの制作費の充当を広告や協賛、番組販売に依存するしかない。事情が厳しいので、眉をひそめるようなことが起きる。これは、米国の放送各社が制作費の大部分を有料放送プラットフォームから受け取るコンテンツ使用料で賄っているのと明らかに対照的だ。

 Kドラマが開拓した放送韓流を「真夏の夜の夢」で終わらなせないためには、コンテンツを絶えず生み出せる環境をつくることだ。音楽・映画など他のコンテンツ産業のように、放送産業の収益構造の配分比率も変わらなければならない。有料放送プラットフォーム企業も、コンテンツ使用料引き上げを事業全体のパイを育む投資と見なす認識転換が必要だ。

崔聖鎮(チェ・ソンジン)ソウル科学技術大学電子ITメディア学科教授

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