#.映像メッセージ・プラットフォーム「スタリ(stari)」を作ったアン・テヒョン氏は数年前、海外のK-POP関連投稿の中で、「もっとスターと『自分だけの話』が一緒にできたら」という海外のファンたちのコメントに注目した。ライブ・アプリなど各種のファン向けコミュニティー・サイトはあっても、1対1のコミュニケーション・プラットフォームは全くないことに気付いたのだ。昨年、友人たちと共にスタリを公開して以降、スウェーデン、ベルギー、米国、日本など全世界40カ国余りのK-POPファンたちがスタリを訪れた。ファンたちがスターにストーリーやエピソードを送り、決まった金額を払えば、それに合う映像を制作する。英語字幕もあるが、韓国語のままのものが人気だ。アン・テヒョン氏は「K-POPファンたちにとってハングルは万国共通語。映像や声も『自分だけのグッズ』になる」と語った。

#.「音楽は言語や地域に関係なく私たちをつないでくれる。気候も同じだ。地球を脅かす気候危機をこれ以上、放っておけない」。タイのBIGBANGファンのスダティップ(Sudathip)さんはK-POPファンたちの気候行動グループ「K-POPフォー・プラネット(Kpop4Planet=地球のためのK-POP)」のホームページを通じ、「行動するK-POPファンたちの姿を見せよう」と訴えた。

■K-POPファン、受け手から積極的な作り手・文化プロデューサーに

 全世界の韓流ファンが1億人を超え、ファン層も広く、そして厚くなっていることから、グローバル規模の「ファンダストリー(fan + industry)」市場が形成されつつある。ファンダストリーとはファン中心の産業を指す造語で、各種グッズ産業はもちろん、差別化されたコミュニケーションを望むファンとアイドルを直接つなぐファン向けプラットフォームを基盤としている。さらに最近ではK-POPスターの政治的・社会的影響力をもとに、さまざまな市民運動に成長している。米ビルボード誌はこのほど、「BTS(防弾少年団)のファン向けコミュニティー・サイト『ウィバース(Weverse)』のようにファンとスターの親近感を強調し、より積極的なファンを優遇しようという概念が全世界の音楽市場に拡大している」「K-POPファンたちが誕生させた『ファンダストリー』市場が『スーパーファン(super fan)』の時代をリードしている」と診断した。

■世界で最も革新的な国は韓国…米国11位、日本は?

 BTSを筆頭とするK-POPは昨年、全世界で最も速く成長した音楽のジャンルだ。世界のレコード業界を代表する団体「国際レコード産業連盟(IFPI)」の発表によると、K-POPと韓国音楽市場は前年比44.8%という圧倒的な増加傾向を見せたという。ハイブ(HYBE)=旧:ビッグ・ヒット・エンターテインメント=のウィバースといった大型コミュニティーのほか、ニッチ(すき間)を狙ったスタートアップも生まれている。スター映像メッセージサービスのスタリや「セレビ(CELEBe)」をはじめ、ファンたちが作ったK-POPグッズを全世界のファンに中継販売する「ドクチル(Duckzill)」などが代表的な例だ。スタリは海外のファンが65%程度を占め、K-POPスター投票プラットフォームである「スタープレイ(STARPLAY)」は現在約150カ国・約330万人が利用している。K-POPファンの経済規模は8兆ウォン台(約7900億円、IBK企業銀行推定)を上回り、今後さらに拡大するものと思われる。

 「ブケ(副キャラクター=普段の自分とは違う姿やキャラクターとして行動すること)」など、さまざまな人格を楽しみながら育てるMZ世代(1980年代初めから2000年代初めに生まれた世代)は「メタバース(Metaverse =3次元の仮想世界)」市場も拡大させている。ネイバーの3次元アバター・プラットフォームで「ゼペット(ZEPETTO)」の「ブルピン(ガールズグループBLACKPINK〈ブラック・ピンク〉の略称)ハウス」通算訪問者数は6カ月で1300万人を記録した。ファンたちはここでほかのアバターと友達になるなど、別の世界を作っている。スタリのアン・テヒョン代表は「社会的な多様性に声を上げて、趣向を積極的に打ち出すMZ世代のコンテンツ消費力と創造性がファンダム(ファン層・ファン文化)産業を育てる重要なカギとなっている」と語った。

■市民活動家へと進化するK-POPファン

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は先日、ツイッターに「もしあなたが本、音楽、映画、展示会、コンサートに300ユーロ(約4万円)使うことができたら、真っ先に何を買いますか」と書き込んだ。そして、その直後に「(男性アイドルグループ)BTSのコンサートです。ありがとうございます。BTS『Butter』ストリーミングしてください、大統領」というリプライをリツイートした。これが5000件以上リツイートされ、「いいね」が2万件近く付いて話題になった。マクロン大統領の今回のツイートは、文化享有の重要性を強調しつつ、フランスの18歳以下の青少年を対象に2年間で300ユーロ相当の「文化パス」を提供する政策を知らせるためのツイートだった。このため、K-POPファンの影響力と「PR効果」を積極的に利用したわけだ。それもそのはず、ツイッターによると、この10年間、ツイッター上でK-POPに言及した投稿の件数は、2010年の509万件から昨年は61億件、つまり10年で約1100倍にふくらんだという。

 オーストラリアのメディア「ザ・カンバセーション」は「K-POPはほかのファンダムより最も創造的かつ献身的であり、組織的」と評価した。そのおかげで、海外で最も速く広がる「組織文化」になったのだ。スターに向けられていた「朝貢文化」がK-POPファンダム特有の「良い影響力」と出会って、寄付などの市民運動に進化した。今年3月に誕生した気候行動プラットフォーム「K-POPフォー・プラネット」がその代表的な例だ。これを作ったインドネシアの大学生サリファさんはCNNのインタビューで、「単なる『ファン・ガール』ではなく、社会を変える市民運動に変化ができそうだと感じた」「SNSの力をもとに、MZ世代が理解できる簡単な言語で気候の危機を解決していくのが目標」と語った。米ビルボード誌は「これまでが一方的なファンクラブ文化だったとすれば、今はK-POPファンダムを通じてスターとファンが共生する『パートナー』役へと大きく成長している」と伝えた。

崔宝允(チェ・ボユン)記者

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