2008年に韓米自由貿易協定(FTA)締結について、民主党と左派は「米国が庶民労働者を全て殺し、国の政策を無力化するだろう」と主張した。電気のこぎりとハンマーを振り回して批准を阻止しようとした。しかし、韓国の輸出は急増し、米国の貿易赤字は増えた。真逆の結果となったわけだ。牛海綿状脳症(BSE)騒動でも「韓国人のBSE発病率は95%」「化粧品や生理用品でも伝染する」と言い張った。「米国のBSE患者25万-65万人が認知症患者として隠蔽され死亡した」との主張も飛び出した。人間の脳がスポンジ状になるという話に女子中学生は泣いた。しかし、米国産牛肉を食べてBSEにかかった人は1人もいなかった。終末高高度防衛ミサイル(THAAD)配備の際には「レーダーの電磁波のせいでがんにかかり、農作物が死滅する」と言った。「電磁波でわたしの体が揚げ物になる」といった歌も口ずさんだ。しかし、THAADの電磁波が人体に与える影響は携帯電話よりも小さかった。

 天安爆沈事件では「内部爆発で沈没した」「機雷爆発」「米原子力潜水艦と衝突した」といった主張が広まった。セウォル号事故について、ジャーナリスト金於俊(キム・オジュン)氏は「朴槿恵(パク・クンヘ)政権がわざと沈没させた後、航跡データを改ざんした」と語った。「いかりを故意に下ろして沈没した」という主張もあった。荒唐無稽だが惑わされた大衆が少なくなかった。

 朴槿恵元大統領の「セウォル号空白の7時間」を巡っても、「ホテルで密会を楽しんだ」「美容整形の施術を受け、プロポフォール注射を受けた」「シャーマンを儀式を行っていた」といった疑惑が飛び交った。外遊中には高山病治療のために警護室が持参した「バイアグラ」も問題にした。「青瓦台に四方が鏡張りの部屋がある」とも言った。全て事実無根だが当時には事実のように聞こえた。

 崔順実(チェ・スンシル)氏の隠し財産が300兆ウォン(約28兆円)に達すると言った民主党の安敏錫(アン・ミンソク議員が裁判で1億ウォンの損害賠償を命じられた。安議員は2017年、崔氏の隠し財産を探すと言い、欧州を訪れた後、「朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の統治資金が8兆9000億ウォン、現在の価値で300兆ウォンを超える。そのカネが崔氏一家の財産の出発点だ」と述べた。朴元大統領が死亡した1979年の政府予算は4兆5000億ウォンだった。世界最高の富豪ビル・ゲイツ氏の財産は126兆ウォンだ。いくら政治目的に誇張だと言っても、崔氏の財産300兆ウォンはあんまりではないか。

 ところが安議員は逆に裁判所を非難し、「崔氏一家の財産を調べる特別法が必要だ」と語った。疑惑を指摘するにしても最小限の根拠があり、常識に当てはまらなければならない。しかし、そんな様式は必要ない人がいるようだ。彼らはうそだと分かっても一言も謝罪しない。むしろ腹を立てて反撃をする。そんな人々がこの国の高位公職者たちだ。

ペ・ソンギュ論説委員

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