宋義達(ソン・ウィダル)のチャイナ・プリズム

中国政治・外交の専門家、チュ・ジェウ慶煕大学教授インタビュー(1/3)

「韓国の映画やテレビドラマは、中国資本の投資参加がなければ制作そのものが不可能な状態です。ソウル・東大門市場のデリバリーや消費者金融市場までも中国資本が事実上掌握してますね。韓国国内の中国人には朝鮮族が多いけれども、中国共産党レベルでの組織的介入も十分に可能とみています」

 30年以上にわたり中国の政治・外交を分析しているチュ・ジェウ慶煕大学教授(54)の診断だ。チュ教授は米国ウェスレヤン大学を卒業後、1990年9月に中国・北京大学国際関係大学院に留学して中国研究をスタートさせた。

 『韓国人のための米中関係史:6・25戦争からTHAAD(高高度防衛ミサイル)対立まで』という米中関係の専門書を2017年に出版したチュ・ジェウ教授。今年8月に韓国で出版された『克中の計:韓国の巨大中国克服 1.政治外交安保編』は、6割ほどをチュ教授が執筆した。そのチュ・ジェウ教授と、9月6日の昼にソウル・光化門で会った。

■「中国、東大門市場のデリバリーやサラ金市場まで掌握」

-最近の中国の韓国進出は以前とかなり違っているようだ。

 「そうだ。一言で表現するに、遠慮のない波状攻勢だ。西側で中国共産党の対外浸透工作機関と見なされている『孔子学院』(英語名称はConfucius Institute)が世界で初めて設立された国が韓国。人口比および教育機関比で見た孔子学院の設置比率も、韓国は世界最上位圏に属する。大学や関連関連研究所などでは中国当局の研究費支援があふれている」

-学界での体感はどの程度なのか。

 「端的に言って、韓国は中国の世界戦略プロジェクトである『一帯一路』関連で、中国を除き最も多くの研究がなされている国だ。一帯一路を重点研究する研究所まで生まれている。中国の組織的な宣伝攻勢に加えて、韓国政府系の支援金まで噴出している。親中政権下で繰り広げられている怪奇現象だ」

 

■「20カ国と衝突している中国…“善き隣人”ではない」

-このように波状進出する中国は韓国にとって「善き隣人」なのか

 「周辺国をまず見てみよう。中国は陸上で14カ国、海上で6カ国、計20カ国と国境を接しているが、これらの国の中で、中国を“善き隣人”と感じている国は一つもない。それもそのはずで、中国は2013年に習近平が共産党総書記に就任した後、2049年に世界第1位の国になるという目標達成のため、手段・方法を選ばず自己中心的なやり方で疾走している」

 チュ教授は「中国共産党は、自分たちの一方的なやり方が世界や周辺国にどのような影響を及ぼすか全く考慮しておらず、技術をだまし取り奪い取ることを繰り返して国際的なルール違反を重ねている」としてこのように語った。

 「“中国の夢”は普遍的価値と正当性に欠けている。中華民族の繁栄と唯我独尊的成長だけが彼らの目標だ。米国や欧州連合(EU)も自国の利益に忠実だが、中国のように相手国をむやみに無視することはない。中国の傍若無人、唯我独尊、一方的なやり方は、国際社会にとどまらず韓半島にとっても大変なリスク要因だ」

-なぜ韓半島にとって危険なのか。

 「中国は世界第1位の国を目標に、国力を総動員して米国など西側と緊張を高めている。歴史的に、中国が対内・対外的に落ち着いているときは、周辺国との水平的な『朝貢外交』にとどまるが、緊張した危機の局面になると、周辺国に垂直的な服属を強要してきた。西側との緊張・対立があおられることで、韓国をますます高圧的に脅す可能性が高い」

■「中国、国内統制を強化して対外活動は一段と粗暴に」

-30年前と今の中国を比較すると?

 「中国の改革開放の始まり(1979年)から10年しかたっていないころ、留学生活を始めた。その時点では、中国社会にこの先法治が定着して市民社会が発展し、制度が透明になるだろうという期待感は強かった。しかし今の中国は正反対だ。国内的に統制と抑圧を強化しており、対外的な動きは一段と粗暴になっている。国際社会の規範と制度は元から無視している」

-韓中関係はどうか。

 「今の韓中関係は、韓国の国益および大韓民国という主権国家にとって全くふさわしくない。韓国政府の『低姿勢外交』と中国の『高圧的押し付け』外交で、韓中関係が誤ったものになっているにもかかわらず、誰も指摘しない。こんな状態が続いたら、『中国への韓国服属』が再び起こるだろう」

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