宋義達(ソン・ウィダル)のチャイナ・プリズム

中国政治・外交の専門家、チュ・ジェウ慶煕大学教授インタビュー(3/3)

■「中国の顔色をうかがうのではなく、韓国国民の心情を推し量る対中外交を」

-来年5月に発足する韓国の新政権に、対中外交に関してアドバイスするとしたら?

 「三つの対中強迫観念から脱し、中国の顔色うかがいをやめるのが第一歩だ。また韓国自ら、対中外交を通して何を追求し、何を得るのか、対中外交の原則と目標、価値をはっきりと打ち立てて行動しなければならない。最後に、韓国国民の目線の高さに立ち、これを推し量る対中外交を展開すべきだ」

 チュ教授は「盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代まで、韓国のエリートと一般国民を対象に対中認識についての世論調査をそれぞれ行っていた。2006年の最後の調査を見ると、国会議員の60%は中国に好感を示す一方、一般国民の対中好感度は30%にすぎなかった。こうした乖離(かいり)を縮め、国民の安全と幸福を図る対中外交が必要」と語った。

■「韓国メディア、中国の韓国浸透を暴いて公の話題にすべき」

-中国の脅威と波状的な浸透に、どのように対応すべきだろうか。

 「知識人や指導層の覚醒と共に、メディアの緻密な調査報道、公論化の努力が必要だ。2008年のグローバル金融危機後、米国の大学やシンクタンクが財政難に直面した際、中国資本が洪水のように押し寄せた。このとき、米国の主要メディアが攻撃的な調査報道でこれを暴き、米国民に知らせて危険性を指摘した。数年前のオーストラリアもそうだった。韓国でも、メディアが中国の『静かな韓国侵攻』の実態と問題を積極的に伝えて初めて公の話題になる」

-米中戦略競争時代において、韓国の役割と価値はどのようなものか?

 「潜在的価値と現実的価値、どちらも限りなくある。外交は生き物だ。韓国の地理的位置は不都合だが、地政学的価値と役割は異なる。冷戦時代、自由陣営と共産陣営の最前線に位置することで有していた韓国の戦略的価値は、脱冷戦時代にやや低下したが、米中戦略競争時代は韓国の戦略的価値を高める好機だ」

-どのような側面で好機なのか。

 「一例を挙げると、第1列島線(沖縄-台湾-フィリピン-ボルネオ島を結ぶ中国の海上防衛ライン)内に含まれる国は韓国が唯一だ。中国が太平洋へ進出しようと思ったら第1列島線を突破しなければならないが、その核心となる要所の一つが大韓海峡(対馬海峡)だ。大韓海峡が封鎖されたら、中国は非常につらい。また、韓国国内の軍事基地は中国の心臓部を最短距離で狙える」

 

■「『中国の心臓部』を狙う韓国の戦略的価値、積極的に活用すべき」

 チュ教授は「政治家や政策決定者が、こうした韓国だけの戦略的価値を大胆かつ戦略的に活用すれば、韓国の活路と国益ははるかに大きくなるが、こうした認識がもともとないか、あっても極めて弱いのが残念」としてこのように語った。

 「米中戦略競争時代において、韓国の国家利益が懸かった事案には与野党間の超党派協力が欠かせない。クアッド(米国・インド・日本・オーストラリアの4カ国非公式安全保障協議体)参加のような問題に韓国が超党派で臨めば、米国と中国にレッドラインなどを提示しつつそれぞれディール(取引)ができる。こうすれば、韓国は北東アジアの規範主導者(rule maker)として国益を最大化できる」

-中国もそうした状況を歓迎するだろうか?

 「韓米日3カ国関係においても韓国が主導権を握ることが、中国の立場からするとベターだ。韓国が抜けたまま米日同盟ばかりが密着度を増したら、中国の安全保障上の負担はさらに大きくなる。韓国を含む韓米日同盟の場合、韓国が中間で緩衝者の役割を果たすことができ、中国にとってより利益となる。韓国の外交戦略空間確保の努力により、韓米日と中国まで国益に役立つ。だが今のように韓日関係悪化で信頼が枯渇していたら、試みることすらできない」

宋義達(ソン・ウィダル)先任記者

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