中国が「平和統一」を口実に台湾に侵攻する可能性が高まる中、「台湾は今戦争できる状態ではない」「このままでは中国の攻撃にやられる」との危機感が高まっている。台湾では軍備が拡張され新たな兵器が配備されているにもかかわらず、安全保障に対する国民の意識が低く、また台湾軍にも緊張感が全くないという。

 米国の有力紙ウォールストリート・ジャーナルは26日(現地時間)の1面に「台湾軍は戦争の準備ができているだろうか。そう考える人はほぼいない」という見出しの記事で、米国と台湾政府内の焦りの雰囲気を伝えた。台湾国防部(省に相当)は先日、独自の戦争シミュレーションで「(中国)人民解放軍の上陸作戦を阻止した」と発表したが、この記事はこれと矛盾する内容だ。

 米国のバイデン大統領が「中国が台湾を攻撃すれば台湾を防衛する」と発言し、これに中国が反発するとホワイトハウスと米国防総省が即座に「両岸問題での衝突は望まない」として火消しに追われた。ウォールストリート・ジャーナルはその理由を説明する記事の中で台湾の軍事力を分析し「長く続いた平和と経済的な繁栄の中で、台湾軍の綱紀の緩みは非常に深刻だ」と伝えた。台湾は3年前から徴兵制と志願兵制を同時に行っているが、正規軍は10年前の27万人から現在は18万人ほどに減っているため、中国人民解放軍の100万人の兵力とは大きな違いがある。台湾は毎年8万人を新たに徴兵し、220万人の予備役を維持しているが、その兵力の維持も非常に難しくなっている。徴兵期間はかつての2年から4カ月短くなり、予備役は1-2年に1回ずつ5-7日間にわたり招集され再訓練を受けるだけだ。

 徴兵を終えた台湾の若者は同紙のインタビューに「4カ月の基礎訓練中にやったことは雑草の草むしり、タイヤの移動、落ち葉掃除だった。射撃の訓練も受けたが、それらの訓練はほとんどが無意味だった」「中国が香港を飲み込んだのを見て入隊しようと思ったが、軍の人から『時間を無駄にせず肉をつけろ』と叱られた」と答えた。別のある若者は「1カ月にわたり4時間ごとにマクドナルドのハンバーガーを食べて太り、肥満を理由に徴兵が免除された」と述べたという。

 予備役らも「訓練中はハリウッドの戦争映画を見るとか、読書や絵描きで時間を過ごした」と語る。台湾の監査院と国防部の内部文書には「予備役の訓練場は『時間をつぶそう』という雰囲気が支配的だ」「軍による管理のずさんさと不正で軍に入隊しようとする若者たちの士気が落ちている」といった指摘も記載されている。台湾軍のエリートたちからは「世の中に4カ月でマスターできる専門的な技術や知識などない」「中国の軍事力は台湾の13倍に達するが、台湾の男性は戦う意志さえ失った」など懸念の声が相次いでいるという。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、台湾軍兵士らは自分たちを「いちご兵士」と呼んでいるという。経済的な豊かさと親の過保護の中で育ち、わずかな不便さや困難ですぐに傷つく若い世代を意味する「台湾のいちご世代」から派生した言葉だ。ウォールストリート・ジャーナルは台湾軍が「いちご軍」となった原因について「米国など国際社会が守ってくれるのだから、まさか中国は攻めてこないだろう」「戦争が起これば米国が支援してくれるはずだ」などの考えが定着しているためと指摘している。

 「中国に対抗して戦う」という考えを持つ国民もさほど強い意志を持っているわけではない。台湾の日刊紙・ETトゥデーが今年7月中旬に20歳以上の2640人を対象に行った世論調査によると、中国と戦争が起こった場合「戦う」あるいは「家族の参戦を止めない」との回答は40.9%にとどまり、49.1%は「戦わない」と答えた。

 台湾は中国の野望が差し迫った後になって台湾軍の立て直しに乗り出した。台湾国防部は先月から兵士の訓練を大幅に強化し、新兵全員を戦闘部隊に送り実戦訓練を受けさせる方針に転換した。また中国軍の上陸作戦を阻止するミサイルや空母などの軍備見直しに87億ドル(約9900億円)の特別予算を計上した。2022年度の防衛費は4%引き上げ、総額で151億ドル(約1兆7200億円)の過去最高に達する見通しだ。台湾に武器を売るだけだった米国は先日から台湾軍の訓練を行うため特殊部隊や海兵隊を現地に派遣している。

 このような状況で米国のシンクタンク・新アメリカ安全保障センター(CNAS)は26日(現地時間)、中国が南シナ海のプラタス諸島(東沙諸島)を侵攻するシナリオに基づいたシミュレーション結果に関する報告書を公表した。CNASは「台湾はプラタス諸島を実効支配しているが、中国軍がこの島に駐留する500人の台湾軍を抑留して軍事基地を建設した場合、米国には中国軍を追い出し島を台湾に奪還する明確な手段がない」と指摘した。米国の軍事行動は戦争につながる恐れもあるため、米国も台湾もこの問題で中国と衝突することは望んでいないというのだ。

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