韓国の保守系与党「国民の力」のユ・スンミン元議員は最近、自分が次期党代表適合度1位だという記事をフェイスブック上でシェアして、党代表への挑戦を示唆した。ネクスト・ウイーク・リサーチが今年7月から毎週、韓国国内の成人1000人を対象に定期調査を行って発表しているもので、ユ元議員は過去8週連続で1位になったという内容だ(KBS光州放送・UPIニュース依頼)。

 同社がこれまでの定期調査において、「国民の力」代表適合度と共に実施してきたさまざまな政治課題に関する調査結果は、野党側にとって喜ばしい内容が多かった。革新系最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表の選挙法違反容疑の起訴は「政治報復」だという意見が51%、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領のニューヨークでの発言は「『バイデン』で合っている」という意見が61%、不動産政策がうまいのは「文在寅(ムン・ジェイン)政権の方だ」という意見が41%、「尹錫悦政権の方だ」という意見が38%などとなっている。

 最も目を引くのは、9月末に発表された「民主党の一部で持ち上がっている尹大統領弾劾の主張に共感する」という意見が過半数(53%)だとする調査結果だ。これまで「共に民主党」側から弾劾の主張が明示的に出てきたことはないにもかかわらず、こんな調査を行った背景が気になる。保守的な傾向が強い60代(46%)において弾劾への共感が半分近いことも首をかしげてしまう。偶然なのかもしれないが、この調査の後、「共に民主党」の金容民(キム・ヨンミン)議員は「尹錫悦政権が国民の意向に沿って早く退陣できるようにすべきではないか」と主張した。

 ところでネクスト・ウイーク・リサーチは、韓国選管委傘下の中央選挙世論調査審議委員会(世審委)に登録された93の調査会社リストにはない業者だ。なぜ世審委未登録業者が大統領弾劾のようなデリケートな調査を行い、調査を主管する側も、なぜそんな会社に依頼を行ったのか、理解ができない。選挙法によると、世審委に登録された会社のみが政党支持率、大統領選挙および総選挙の候補支持率など選挙関連の項目を含む世論調査を行うことができる。調査のたびに標本選定や接触現況、重み付けの方法、質問表など詳細な資料を世審委に提出しなければならない。

 ところがネクスト・ウイーク・リサーチは、ほとんど全ての政治調査で測定している「政党支持率」をざっくり省いて調査を行い、世審委のコントロール対象から逃れた。そうした場合、大統領弾劾、政党代表適合度、最近の政治課題などの項目も審議を受けなくてもいい。文在寅政権時代にも、所得主導成長賛成56%、ドルイドキング特別検察官反対52%などの調査を、類似の方法で審議を受けることなく発表した調査会社があった。当時の政権に好意的な結果が多く、視線を引き付けた。

 大統領弾劾に関する世論調査を実施した会社は、年間売り上げ5000万ウォン(約520万円)、分析専門要員など世審委の登録要件を満たしていなくて意図しない形で審議対象から漏れたのかもしれない。もしそうであれば、登録要件を備えた上で審議を受けて、調査をすればよい。世審委のコントロールを受けていても信じ難い調査結果が多いのに、審議を受けずに調査結果を毎週出していては、「怪しい世論調査」とにらまれることは避けられない。

洪永林(ホン・ヨンリム)世論調査専門記者兼データジャーナリズム・チーム長

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