世界一の長寿村と呼ばれていた日本最南端の島「沖縄」。一時、世界中のマスコミと長寿学者たちがこぞって訪れ、沖縄特有の長寿の秘訣(ひけつ)を分析して紹介した。米週刊誌タイムは2004年の特集記事を通じて「100歳まで元気に暮らしたければ沖縄に学べ」と報じた。WHO(世界保健機関)から「世界最高長寿地域」という称号まで得た。その沖縄も、今では長寿村と呼ばれなくなってしまった。

 日本の厚生労働省が今年発表した2021年の平均寿命を見ると、沖縄の男性の平均寿命は47都道府県のうち36位にとどまった。1985年に全国1位だったことを思うと、大きな開きが感じられる。沖縄の男性の平均寿命は80.27歳と、京都の東に位置した日本1位の滋賀県(81.78歳)よりも、約2歳短い。

 沖縄県の寿命の低迷は1990年代から始まった。1995年に4位に下がり、2005年には25位に急落。現在は36位に甘んじている。

 沖縄の女性も同様だ。2021年の平均寿命は87.44歳と、日本国内で7位だった。2000年代半ばまでは、他の地域とは歴然とした差があり、不動の1位だった沖縄のおばあさんたちは、今では他の地域に住むおばあさんたちよりも先に亡くなる。沖縄では糖尿病による死亡率は11.9%と、全国平均の11.4%よりも高い(2018年日本人口動態統計)。世界基準からすれば、依然として沖縄の平均寿命は高い方に属しているものの、日本国内では長寿村ではなく、短命村と言われても致し方ない立場にまで落ち込んだ。

 いったい沖縄で何が起こっているのだろうか。もともと沖縄はさまざまな野菜や海産物、海藻類を主菜としていた。豆腐の摂取量は米国人の8倍だった。「腹八分」という沖縄特有の80%の食事法は、長寿の秘訣として注目された。満腹感も8割で止めて箸を置く、という意味だ。契(まとまった資金をためるための集団組織)の集まりと似た性格の「模合(もあい)」を通じて5、6人の友人が長年にわたって交流し、まるで家族のように暮らした。100歳前後の同年代の老人たちは、「模合」を通じて良くないことや困難なことについて話し合い、互いに協力した。長寿医学者たちは、家族や友人、隣人同士の集団的所属感と強い友愛が自然に長寿文化を形成した、と説明する。日常を絶えず共にする文化や「生きがい」といった言葉は、沖縄人の暮らしのまさに根幹を占めていた。老人になっても寂しくなく、これが長寿につながった。

 このように暮らして来た沖縄は、米軍の長期駐留と西欧式食文化の影響などで、伝統的な生活様式が様変わりした。マクドナルドやKFCといったファストフード店が急速に増えた。2017年の人口10万人当たりの日本国内のファストフード店舗数は、沖縄県が東京都に次いで2位を占めた。「スパム」のようなランチョンミートの摂取も増えた。自動車の普及が増え、運動不足が続いた。すると、2011年の男性肥満率が42.1%に上り、日本国内で最高となった。女性肥満率も34.7%と、全国平均の1.7倍にまで跳ね上がった。これが糖尿病の拡散を招いた。野菜や海藻類、精米し過ぎないコメを食べていた1970年代の沖縄人の糖尿病による死亡率は日本全国で47位だったが、今では日本平均を上回っている。核家族化が急速に進み、模合と生きがいも徐々に姿を消している。

 食生活の変化は、若い世代により急速に迫っている。沖縄県人の80代の期待余命は依然として日本最高水準だが、50代、60代、70代は底辺にまで落ち込んでいる。沖縄全体の平均寿命を引き下げている要因だ。沖縄特有の集団的スローライフは、ファストフード、高脂肪、高糖質などの食事が浸透したことで、崩壊の一途をたどっている。

 盆唐ソウル大学病院精密医学センターのソ・ジョンソン碩座(せきざ)教授(寄付金によって研究活動を行えるよう大学の指定を受けた教授)は「アジア人は数十万年にわたって穀類や野菜、食物繊維を中心とした食事を行い、エネルギー代謝に関する遺伝子がこれに伴って発達してきたが、動物性脂肪の多い西洋式の食事を突然行うようになったことで、肥満が増え、動脈硬化が増加せざるを得なくなった」と説明する。長寿医学者のパク・サンチョル全南大学碩座教授は「沖縄県の医師たちに会うと『健康だった数多くの100歳以上の老人が、今では化石となってしまった』と話す」とし「沖縄は、食と生活習慣が悪化すると、寿命が急激に短くなる恐れがあるということを示す反面教師」と語った。

キム・チョルジュン医学専門記者

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