相手を苦境に陥れる目的で「性的暴力を受けた」と警察に虚偽告訴した男女が、ある女性検事によって相次いで摘発されている。警察が「嫌疑なし」で終結させようとした事件を検事が積極的に掘り起こし、虚偽告訴容疑を明らかにした格好だ。

 性的暴力事件で「虚偽告訴キラー」に浮上した女性検事は、ソウル中央地検女性児童犯罪調査1部の丁貞旭(チョン・ジョンウク)検事(42)だ。丁検事が突き止めた性的暴行を巡る虚偽告訴の被害者は、最近3カ月間だけで5人以上いる。

 丁検事は2月20日、女性のA容疑者を在宅起訴した。A容疑者は昨年4月、男性を強制わいせつの疑いで告訴したが、事件を捜査した昌原西部署は容疑が成立しないとして、昨年7月に送検を見送った。

 その記録が昨年12月、丁検事の手に渡った。丁検事は事件をそのまま放置せず、A容疑者が男性を告発する直前、問題の男性が「A容疑者に暴行された」と通報していた点に疑問を抱いた。丁検事は2人がやりとりしたメッセージや通話などの客観的証拠を追加で提出し、通報者であるA容疑者の虚偽告訴容疑を突き止め、起訴した。 

 元交際相手から性的暴行を受けたと主張した女性B容疑者のケースでも丁検事が虚偽告訴容疑を解明した。B容疑者は2021年3月、交際関係にあった男性から2年間に数回の性的暴行を受けたと届け出た。しかし、ソウル江南署は容疑が成立しないとして、昨年10月に送検を見送った。

 資料を検討していた丁検事は「被告訴人」の男性を呼び、B容疑者との関係について事情を聞いた。B容疑者が被害男性を虚偽告訴するだけのいきさつがあるかどうかを先に把握するためだった。男性からB容疑者と交わした携帯メールなどを提出してもらい、それに基づき補完捜査を行った上でB容疑者を在宅起訴した。

 昨年9月、ストーキング被害者を相手に逆に性的暴行を受けたと虚偽告訴した女性C容疑者のケースもある。事件の不送致記録を受け取った検察は、事件後2人が交わした携帯メールの内容、警察への通報内容などを再確認した。その結果、「ストーキング」で通報されたC容疑者が「性的暴行を受けた」と虚偽告訴した事実を確認した。

 虚偽告訴事件の被害者が女性である場合もあった。2月27日に在宅起訴された男性D容疑者のケースだ。飲食店で会った女性にからみ、被害女性が断ると、D容疑者が「酒に酔った状態で女性に準強制性交を強要された」と通報した事件だ。ソウル鍾路署は送検を見送った。

 事件を引き継いだ丁検事は、資料の補強に乗り出した。 丁検事は「公の場である飲食店で男性が女性から準強制性交を強制されたというのが常識に合わないように思えた」と話した。その結果、D容疑者が当時、飲食代を巡って女性と口論になり、階段で押し倒されたと通報され、それをもみ消すために虚偽申告に及んだことが判明した。

 丁検事は自身の捜査実績に対して「検察捜査権完全剥奪法の波及効果だ」と説明した。共に民主党が推進した検察捜査権完全剥奪法に対抗し、法務部が下位の施行令を見直し、検察に虚偽告訴犯罪の捜査権を与えた結果だという。

 法務部は昨年9月「検事の捜査開始範囲に関する規定」を改正し、検事が捜査できる「重要犯罪」に偽証、虚偽告訴など司法秩序阻害犯罪を含めた。この施行令改正は共に民主党が推進した「検察捜査権完全剥奪法」に対応し、韓東勲(ハン・ドンフン)法務部長官が切ったカードだった。

 丁検事は犯罪被害者保護支援で2013年に検察総長表彰を受けた。16年にも同様の功績で法務部長官に表彰された。 丁検事は優秀捜査事例に15回選定され、22年下半期には第88回「模範検事」にも選ばれた。

 丁検事は「性的暴力事件は虚偽告訴が多いが、虚偽が疑われるという事情だけでは立件し捜査することが困難な部分がある」としながらも、「無念な思いをする人が出ないように、客観的な証拠に基づき徹底的に捜査する」と話した。

キム・ミョンジン記者

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