マサチューセッツ工科大学(MIT)のノーム・チョムスキー名誉教授(94)が児童性犯罪者の故ジェフリー・エプスタイン元被告と数年にわたり交流を続け、またエプスタイン氏と巨額の金融取引も行っていたことが分かった。チョムスキー氏は資本主義における不平等や抑圧を批判する活動を続けてきた米国の進歩系知識人として知られる。

 米ウォールストリート・ジャーナルは17日(現地時間)、「チョムスキー氏が2018年にエプスタイン氏の関係する口座から27万ドル(約3700万円)の送金を受けた証拠を確保した」と単独で報じた。これについてチョムスキー氏は「その27万ドルは別の口座にあった私の個人資産であり、エプスタイン氏からは一切受け取っていない」と反論している。エプスタイン氏から受け取った金ではないということだ。自分のものだったこの現金がエプスタイン氏の口座を経て自らに入金されたことになるが、これについてチョムスキー氏は「15年前に妻が死亡した際、共同の資産を整理していた時に彼から『技術的な支援』を受けたため」と説明した。要するにチョムスキー氏の個人的な金融問題にエプスタイン氏が深くアドバイスし、その過程で口座まで提供してくれたというのだ。

 ヘッジファンドの元マネージャーで億万長者だったエプスタイン氏は、恵まれない家庭の14-19歳の少女数千人をそそのかして性奴隷とし、また政財界や学界、文化界の有力者らと投資のアドバイスや性接待で巨大な人脈を構築した人物として知られる。2008年に未成年に対する性犯罪で服役した前科があり、2019年に再び服役していた時にニューヨークの刑務所で死亡した。

 チョムスキー氏は著名な言語学者で政治評論家・社会運動家でもあり、反米・反資本主義の立場から先頭に立って活動を続けてきた。とりわけ米国のリベラル陣営からは政治的懸案が浮上するたびに「時代の良心、世界的な権威」などとして公の場での発言が求められた。チョムスキー氏は金於俊(キム・オジュン)氏、チュ・ジヌ氏によるフェイクニュース捜査では彼らを擁護し、また済州海軍基地建設反対、民主労総によるゼネスト、文在寅(ムン・ジェイン)政権が進めた韓半島終戦宣言なども支持した。先月の韓米首脳会談では北朝鮮の核開発に対抗する拡張抑止の強化を定めた「ワシントン宣言」が発表されたが、これについてもチョムスキー氏は「米国の新冷戦に韓国が関与すれば、韓半島の平和は危険な状態になる」「韓国は直ちに北朝鮮と平和協定を締結し、米国から独立すべきだ」と訴えた。ロシアによるウクライナ侵攻については「戦争の原因はロシアではなく米国であり、西側が選択的に怒りを表出している」として「ウクライナは領土を分かち、ロシアに譲歩せよ」と主張してきた。

 エプスタイン氏はウォール街最上流層の社交界で活動する「捕食者型資本家」であり、貧しい少女ばかりを狙った性犯罪者として知られるが、チョムスキー氏がそのエプスタイン氏と親交があったという事実は米国社会でも大きな波紋となっている。ウォールストリート・ジャーナルは「少なくとも2015年からチョムスキー氏はエプスタイン氏と何度か会っていた事実も複数の資料から確認した」と伝えた。エプスタイン氏の紹介で2015-16年にはハーバード大学のマーティン・ノワク教授、映画監督のウディ・アレン氏、イスラエルのバラク元首相らとも何度か会ったという。ボストンからニューヨークまでエプスタイン氏の専用機で向かい、マンハッタンにあるエプスタイン氏の邸宅タウンハウスで夕食も共にした。この専用機とマンハッタンの邸宅はエプスタイン氏が性犯罪で主に利用していた。ここを訪れた人たちは「いつも10人ほどの幼くかわいい少女たちが『職員』として世話をしてくれた」と証言しており、また被害者たちは「ここで有力者たちと強制的に性関係を持たされた」と明かしている。

 ウォールストリート・ジャーナルの記者が「エプスタイン氏と何の理由で、また何回会ったのか」と質問すると、チョムスキー氏は「まずこれはあなたも誰も関与する問題ではない」とした上で「政治問題、学術問題、国際情勢について議論するため何度か会った」と答えた。ボストンとニューヨークを行き来するたびに専用機を使ったことについても「それが飛行機だったかはよく分からない」「偉大な芸術家と夕食を共にしたことまであなたに伝える義務はない」と述べた。チョムスキー氏は2020年にある講演を行った際、エプスタイン氏がMITに寄付を行ったことへの見解を問われた。これについてチョムスキー氏は自らとエプスタイン氏との関係には触れず「エプスタイン氏より悪い人間もMITに寄付してきた」と語った。

 エプスタイン氏と交流があった人物としては英国のアンドリュー王子、マイクロソフトのビル・ゲイツ元会長、クリントン元大統領、トランプ元大統領なども名前が上がっている。サマーズ元財務長官はエプスタイン氏に妻の財団への支援を求め、ニューヨークの名門バードカレッジのレオン・ボットスタイン学長は大学への寄付金名目で15万ドル(約2000万円)を受け取っていた。エプスタイン氏のメインバンクだったJPモーガンは性犯罪被害者たちから集団で訴えられた。また別の取引銀行だったドイッチェ・バンクは17日、エプスタイン氏による被害者の一部に7500万ドル(約100億円)を支払うことで合意した。

ニューヨーク=鄭始幸(チョン・シヘン)特派員

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