▲韓国の野党議員で構成される「福島核汚染水海洋投棄阻止大韓民国国会議員団」が10日午後、日本の原子力規制委員会を訪れ、福島原発の汚染水海洋放出に反対するデモを行った/10日、共に民主党

 2008年の狂牛病騒動の際、ある女優は「米国産牛肉を食べるならば青酸カリを口に入れる」と発言した。その一言で一躍脚光を浴びた。そして、彼女が米ラスベガスでハンバーガーを食べる動画が論議を呼んだ。狂牛病問題の前に撮影したものだと釈明した。青酸カリよりも危険な食べ物を口に入れていたことを後から知ったことになる。潜伏期間の10年間、どれほど不安だっただろうか。彼女はその恐怖の歳月を朴元淳(パク・ウォンスン)元ソウル市長に追悼文を寄せ、尹美香(ユン・ミヒャン)議員の遊説を支援することで乗り越えた。

 金大中(キム・デジュン)政権下で農林部長官を務めた人物は、米国産牛肉を食べるのであれば、「鳥インフルエンザにかかった鶏肉を茹でて食べよう」と発言した。それから3年後、彼がハンバーガーを食べながら米国旅行をした事実が明らかになった。この人物は「米国で販売されている牛肉は生後20カ月未満なので、韓国が輸入する30カ月以上の牛肉とは異なり安全だ」と言った。我々が食べる韓牛(国産牛)や米国人が食べる米国産牛肉は構わないのに、韓国が輸入する米国産牛肉だけが危険だというのだ。食べ物の安全性まで政争に合わせて絶妙に調整される。

 2人は偶然、米国のハンバーガーを食べた事実が明らかになっただけだ。2021、22年の韓国は米国産牛肉を全世界で最も多く輸入する国になった。飲食店で米国産牛肉を焼いて食べる客をひそかに眺めて思った。「光化門でろうそくを灯し、『脳に穴が開いて倒れる』と叫んでいた人たちではないか」と。

 「米国産牛肉を食べるならば」という恐怖マーケティングの手法が15年ぶりに「福島の汚染水を飲むならば…」とパロディ化されている。民主党議員は「いっそ☓(大便を指す卑語)を食べる」と発言した。福島から放出された水が韓国の海の安全を脅かすことはないと説明すれば、「それならお前たちが飲め」と言う。

 民主党の人々は今後、水産物を口にすることなく暮らそうとしている。韓国の海が放射能だらけになるというのだから、そこで獲れる魚も毒物だろう。人糞より有害だと言ったからには食べられなくて当然だ。総選挙で利益を得ようと声高に叫んでいるが、彼らの水産物絶食がいつまで続くのか知りたいものだ。

 狂牛病は牛肉の国籍によって生死が分かれたが、汚染水デモには国境線がない。日本産、韓国産を問わず、水産物は全て「セシウムだらけ」だと民主党は主張する。それでいて、もし魚を口に入れてしまえば、自分たちが吐いた言葉を否定することになる。

 狂牛病は動物性飼料禁止や危険部位除去のような安全措置がそうしたデマを打ち消す口実を提供した。福島の場合はそういう退路がない。民主党は汚染水の放流を認めた国際原子力機関(IAEA)の判定を「中身のない報告書」だと決めつけ、汚染水を飲んでも構わないという専門家を「モグリ」扱いした。汚染水デマで利益を得た後、脱出するためのロープを自ら切ってしまった。

 1~2年で解決できる問題でもない。福島の汚染水はタンク1066個に132万トンが貯蔵されている。日本は30年間、1日に120トンを放流する方針だ。そうして太平洋側に流れ出た汚染水は、海流に沿って米アラスカ、カリフォルニア、ハワイを経て大きく一周した後、4~5年後には韓国周辺の海に流れ込むと予想される。時が経てば、放流量の累積値は増える。民主党が主張する韓半島海域の放射性物質の濃度も次第に上昇するだろう。30年後、最後に放流された汚染水が韓半島に到着するのは2057年か58年になる。1964年生まれの李在明(イ・ジェミョン)代表が90歳を超えるころだ。

 李在明代表の家族は、一度に寿司10人前の出前を頼んだ。秘密選対用でないとすれば、4人家族が1人で2人前以上食べたことになる。そんな家庭が今後35年間も魚を絶って暮らすことなど想像できない。打開策は二つだ。 まず、李在明代表が発言を撤回することだ。李代表は「尊敬する朴槿恵(パク・クンヘ)と言ったら、本当に尊敬していると思われた」などと発言し、自ら信頼性をおとしめた。不逮捕特権の放棄も大統領選の公約、国会演説で2度も約束したが、その場しのぎに終わった。

 第二に表では「セシウム汚染魚」を吐き出すふりをし、裏ではこっそり食べる方法もある。断食はまともにやれば10日余りが限界だとされるが、左派陣営では数十日も食べずに正常に日常に復帰した闘士が多い。民主党の国会副議長は日本糾弾決議案を通過させた日、日本旅行計画を携帯メールでやりとりした。その文字には「韓国人旅行客が少ない」観光地の情報が書かれていた。李在明代表もそこがどこなのか気になることだろう。

金昌均(キム・チャンギュン)論説主幹

ホーム TOP