▲イラスト=キム·ヒョングク

 韓国人が自ら考える大韓民国は変化に対する適応力に優れ、技術に対する前向きな受け入れ姿勢が整った国だ。インフラが整っており、バランスの取れた産業構造を土台に創意性と卓越した文化的感覚に基づいた新しいコンテンツが絶えずあふれる国だ。大多数の国民は自らを勤勉だと考えている。勤勉さと誠実さで奇跡の経済成長を達成し、先進国になったと満足している。欧米を訪れると、サービスの遅さがもどかしい。貧しいが楽天的な南欧や南米の国を訪れれば、「もっと勤勉ならば豊かに暮らせるのに」と残念がる。政治に対する不満が多いものの、ここまで大韓民国の変化とその過程に対する自負も強い。

 ところが、現実は我々の考えとは異なり、いつからかさまざまな分野で後れを取る国になりつつある。最高時速300キロの高速鉄道が開通して20年になるが、平均速度は168キロにとどまっている。一方、中国の高速鉄道は平均時速350キロで営業運転しており、日本は時速500キロで走るリニアモーターカーの中央新幹線で東京~名古屋~大阪を1時間で結ぶ工事を進めている。こうした状況で、韓国は10兆ウォン(約1兆1000億円)をかけ、大邱と光州を結ぶタルピッ鉄道の建設を妥当性の事前検討なしに進めようとしている。

 韓国人は住民登録番号で効率的な行政が行われていると考えているが、我々の住民登録証は何の情報も含まないプラスチック片にすぎない。韓国に比べて個人情報にはるかに敏感で保守的だとされる欧州のドイツ、オランダなどではさまざまな情報を含みながらもセキュリティー機能を備えた電子身分証を導入している。グーグルマップ、アップルペイ、ウーバーのような世界の標準的なサービスの多くは韓国では使えない。韓国人は日本をガラパゴスだと笑うが、それに劣る状況が続いていることを我々は知らない。オランダのセキュリティー企業サーフシャークが毎年110カ国を対象に調査している「デジタル生活指数(DQL)」で韓国は2021年の2位から22年は10位、2023年には20位に転落した。アジアでもシンガポールだけでなく、日本にも後れを取っている。我々が誇っていたインターネットの品質は日本が25位だったのに対し、韓国は64位だった。電子政府分野で世界4位に入り、メンツを保っているが、最近トラブルが相次いでおり、それさえも見通しは暗い。未来は人工知能(AI)の時代だと言われるが、そのために必要なデータの品質は粗悪で断片化している。韓国が過去の成果と栄光に酔っている間に着実に基盤を整え変化を続けた国々が韓国を追い抜いているのだ。

 韓国は先進国なのに、なぜ国民は幸せではなく、生活の質は劣悪なのかと多くの人が疑問に思う。どの国が豊かに暮らしているかを測る尺度はいくつかあるが、一般的にドルに換算した1人当たり国内総生産(GDP)を使用する。英経済誌エコノミストの集計によると、22年時点で韓国の1人当たりGDPは3万2255ドルで、調査対象34カ国のうち日本(3万3815ドル)に次ぐ世界21位だ。国ごとに住宅、外食など国際的に取引されない商品とサービスが多く存在するため、それを反映した1人当たり購買力平価(PPP)ベースに換算して比較するのがより正確だ。それによれば、韓国は19位で、28位にとどまった日本を上回る。もう少し努力すれば、フランス(15位)と英国(16位)にも追いつけそうだ。だが、時間当たり1人当たり購買力平価指数で比較すると、韓国は49ドルで調査対象34カ国のうち33位まで順位を下げる。調査対象国の中で最も劇的に順位が低下するのが韓国だ。韓国は効果的に仕事をしているのか意識せず、ただ熱心に、長く働くことで問題を解決する国家なのだ。そのため、国民一人一人に人生の余裕がなく、不幸に満ちているのだ。

 韓国社会は忙しく誠実なように見えるが、実は無意味な労働に満ちている。大切な部分に集中して高い付加価値を生み出すのではなく、無味乾燥に繰り返したり、仕事しているように見せたりすることがはるかに多い。生産現場では体系的なシステムより勘が優先される場合がまだまだ多く、オフィスでは上から降ってくる無駄な指示に渋々従う状況に愚痴をこぼした経験が誰にでもある。生産性向上のための基盤構築と資料蓄積を疎かにした結果、多くのことが長時間労働を通じた試行錯誤で行われている。経験は蓄積されず、一過性で消え、同じことを限りなく繰り返す。そのため、韓国の時間当たり労働生産性はOECD加盟37カ国平均(64.7ドル)の73%にとどまっている。韓国より生産性が低い国はギリシャ、チリ、メキシコ、コロンビアの4カ国しかない。

 教科書で学んだ通り、韓国は資源はないものの、豊富で優秀な労働力を大量に投入して成長してきた。しかし、今や韓国の人的資源は世界で最も速いスピードで枯渇しつつある。過去のやり方はもはや維持できないため、ただ一生懸命にやっているだけでは現在の地位さえ守れない限界状況に迫っているが、依然として過去の「やればできる」という認識に埋没し、今求められる生産性向上のための質的変化は遅れている。「無知ならば体で苦労しろ」という格言が現在の韓国の実情かもしれない。

チェ・ジュンヨン法務法人律村専門委員

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