▲公正取引委員会の韓基禎(ハン·ギジョン)委員長(左)と駐韓米国商工会議所(AMCHAM)のジェームズ・キム会長。二人は今月7日にソウル竜山区のグランド・ハイアット・ホテルで開催された韓委員長の特別懇談会で互いに言葉を交わした。/ニュース1

 韓国国内で活動する約800社の米国企業が会員となっている駐韓米国商工会議所(AMCHAM)が尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に報告書を提出した。報告書には「米中対立の影響で中国を去るいわゆる『脱中国』を進める企業を韓国に誘致する絶好の機会」「それには重大災害処罰法や週52時間勤務制度など過度な規制を果敢に解除すべきだ」などと記載されているという。AMCHAMが韓国政府に対して制度の見直しを求める書簡を送るケースは過去にもあったが、数々のデータやその分析内容まで記載された報告書形式の文書を大統領に提出するのは今回が初めてだ。

 「韓国におけるグローバル企業のアジア太平洋地域拠点誘致戦略報告書」と題された32ページのこの報告書は今月初めに尹大統領に提出されたという。AMCHAMが18日に明らかにした。報告書はAMCHAMの理事30人全員の自筆署名付きで、これはその内容に対する理事全員の同意を意味する。AMCHAMは「以前は主に関係する政府部処(省庁)に政策提言(レター)を行ってきたが、今回は初めて韓国大統領室に提言とそれを裏付けるデータを添えて提出した」と説明した。AMCHAMは2022年4月の尹大統領当選直後にも「外国人投資拡大に向けた大胆な規制緩和」など政策提言に関する書簡を提出している。

 今回報告書が大きく取り上げたのは「中国のゼロコロナ政策や米中対立による企業の脱中国加速化は韓国にとって大きなチャンス」という点だ。報告書は「(中国の)地政学的懸念と経済の不確実性により、アジア太平洋地域の拠点として香港や中国はふさわしくないと認識されるようになった」「韓国はインフラが整備され、一定規模の内需に対する戦略的かつ地理的な隣接性、サプライチェーンに必要なインフラも整備されているため、多国籍企業にとって(アジア太平洋地域拠点の)最高の候補地として浮上した」との見解を示した。AMCHAMが先日会員企業を対象に行ったアンケート調査でも「アジア太平洋地域に本部を置きたい国」で韓国はシンガポールに次いで2位だった。

 ただその一方でAMCHAMは「地理的な強みや優れたインフラにもかかわらず、規制が原因で海外企業の誘致は難しい」と韓国の問題点も指摘した。具体的にはまずCEO(最高経営責任者)が刑事責任を問われるリスクだ。AMCHAMは韓国の重大災害処罰法について「日本、香港、シンガポールなどに比べてはるかに重い懲役刑あるいは罰金刑が宣告されている」「これはCEOにとって大きなリスク」と説明した。

 さらにデジタル経済の分野でも「韓国のクラウド市場はネットワークの分離、クラウドセキュリティー認証プログラム、セキュリティー評価制度など数々の規制によりグローバル環境とは完全に分離されており、人工知能(AI)などの技術革新が国内に導入されにくい」と指摘した。また報告書によると、「採用や解雇の柔軟性」「労働時間に関する規制」など各国の労働政策やその柔軟性を比較した調査で韓国は141カ国中97位となり、ライバルのシンガポール(1位)、日本(11位)、香港(19位)に大きく後れを取っていた。

 AMCHAMの関係者は「定期的でない過度な税務調査、柔軟性のない週52時間労働など、海外のスタンダードから懸け離れた規制を解除するだけで、グローバル企業はアジア太平洋地域の拠点を韓国に置く可能性は高まる」「報告書はこの点について説明した」とコメントした。

イ・ジョング記者

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