▲イラスト=UTOIMAGE

 日本に渡っていた7世紀の百済の仏像が、95年ぶりに故国の地で展示された。

 25日、京畿道竜仁市の湖巌美術館でメディアに公開された企画展「泥に染まらない蓮花(れんげ)のように」では、意外な作品が視線を引き付けた。卵型の顔、横長の目、真っすぐ伸びるすらりとした鼻筋。顔全体にほほ笑みをたたえた、百済の「金銅観音菩薩(ぼさつ)立像」だ。日本へ持ちだされたこの仏像が、1929年に大邱で展示されて以来、95年ぶりに韓国国内の展示で公開された。

 高さ26.7センチ。頭には仏をたたえる宝冠をかぶり、左手には浄瓶を持った観音菩薩像だ。口角を上げてほほ笑みを浮かべた顔立ちは、若い青年を連想させる。湖巌美術館のイ・スンへ責任研究員は「すらりとした腰と軽くよじった骨盤が紡ぎ出す体の線が美しい」とし「青年の顔と女性の体が持つ美しさを調和させて組み合わせた姿は、百済の匠(たくみ)が到達した芸術的境地を示している」と語った。

 この仏像は、1907年に忠清南道扶余・窺岩面の寺院跡で発見された「金銅観音菩薩立像」のうちの一つだ。1点は韓国の国宝に指定され、現在は国立扶余博物館に所蔵されている。こちらの仏像は日本人収集家・市田次郞が買い入れ、日本へと搬出した。なお、搬出の正確な時期は確認されていない。

 2018年に日本の個人コレクターがこの仏像を持っていると公表し、話題になった。当時、韓国を代表する仏像専門家らが集まった評価会議で「仏像の鑑定価格は42億ウォン(現在のレートで約4億7000万円。以下同じ)」という結論を出し、国立中央博物館がこれを購入金額として提示したが、コレクター側は3倍以上の150億ウォン(約16億9000万円)を提示し、交渉は決裂した。湖巌美術館の関係者は「展示準備の初期から、この仏像を借りようと所蔵家側と接触していて、最後の最後で実現した」と明かした。

 27日に開幕する今回の展示は、東アジア仏教美術に「女性」という観点から本格的に光を当てる、初の展示だ。韓国・中国・日本の仏教美術のスポンサーとなり、制作してきた女性たちに焦点を合わせた。湖巌美術館は、韓国国内および海外合わせて27カ所から仏画や仏像、写経、螺鈿(らでん)経箱、刺しゅう、陶磁器など仏教美術品92点を集めた。米国のメトロポリタン美術館、ボストン美術館、ドイツのケルン東アジア美術館、東京国立博物館など米欧日18カ所から遺物52点を借り、韓国国内からはLeeum美術館など9カ所が所蔵する国宝1点、宝物10点など40点が出品された。

 今回の展示では、福岡・本岳寺蔵の15世紀の朝鮮仏画「釈迦誕生図」とドイツ・ケルン東アジア美術館蔵の「釈迦出家図」が初めて一堂に会する。美術館側は「セットで制作された二つの作品が、数奇な運命を経て故国で再会した瞬間」と説明した。また、メトロポリタン美術館蔵「釈迦如来三尊図」など海外の所蔵品47点が韓国で初めて紹介される。期間は6月16日まで。入場料は大人1人1万4000ウォン(約1580円)。

許允僖(ホ・ユンヒ)記者

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