▲イラスト=金炫国(キム・ヒョングク)

 北朝鮮が、戦闘機から発射する新型中距離空対空ミサイル(AAM)の実射訓練を5月17日に公開した。韓国軍は、既存の米国製・欧州製AAMを代替する国産化事業を今年から始めたが、北朝鮮は既に開発を終えて訓練まで成功したのだ。

【写真】北朝鮮が公開した新たな通常兵器

 北朝鮮の朝鮮中央通信は5月15日、「金正恩(キム・ジョンウン)総書記が北朝鮮空軍の反航空(防空)戦闘および空襲訓練を現地指導した」と報じた。ミグ(MiG)29戦闘機から新型AAMや滑空誘導爆弾を発射・投下し、巡航ミサイル・無人機標的を撃墜する訓練だった。この訓練で北朝鮮は、ロシアから技術移転を受けて開発したと推定される新型中距離AAMの実射場面を初めて公開した。

 北朝鮮は最近、このように韓国軍が絶対優位と評されていた通常戦力の開発に拍車をかけている。同じく5月17日に北朝鮮は、米国の「リーパー」と外形が類似した無人攻撃機も公開した。

 専門家らは、北朝鮮特有の模倣技術と朝ロ蜜月によるロシアからの技術移転が相乗効果を生み、通常戦力の急激な増強が進んでいるものとみている。核・ミサイル戦力で優位にある状況で北朝鮮が通常戦力まで現代化していることに伴い、国防力のバランスが北朝鮮側に傾きかねない―という懸念が生じている。

■核を持つ北朝鮮、戦車・ミサイルの新技術も手に入れて…局地戦挑発の可能性高まる

 5月17日に北朝鮮が公開した空軍の訓練には、MiG29戦闘機から新型AAMや滑空誘導爆弾を発射・投下し、巡航ミサイルや無人機標的を撃墜する場面が登場する。北朝鮮は2021年に国防発展展覧会「自衛2021」の会場で初めて新型中距離AAMを公開したが、開発を完了して実射撃訓練まで行ったのだ。

 北朝鮮の新型AAMの外形は中国製のPL12や米国製のAMRAAMにそっくり、と評価されている。特に中国製のPL12とはよく似ていて、これは北朝鮮がロシアから技術移転を受けた可能性を示唆している。中国も、やはりロシアから技術移転を受けたと推定されるからだ。保守系の旧与党「国民の力」に所属する庾竜源(ユ・ヨンウォン)議員は「北朝鮮は今回の実射訓練で短距離空対空能力だけを示したが、技術的難度が高い中距離AAMシステムの統合技術をある程度確保したものとみられる」とし「最近のロシアとの軍事協力に伴う技術移転の可能性がある」と指摘した。

 AAMが撃墜した空中標的は、「3M24ウラン・ミサイルの北朝鮮版」とも呼ばれる大型ミサイルと、「エイ」の形をした無人機とみられる。韓国軍の巡航ミサイルとエイ形無人機に対する空対空戦闘能力を示すためのものと推定される。

 北朝鮮は最近、朝ロ蜜月による技術移転で、通常戦力の分野においても急激に改善を進めているものとみられる。北朝鮮は4月30日、「北朝鮮版イージス艦」とも言える崔賢型の超音速巡航ミサイルと戦略巡航ミサイル、反航空(対空)ミサイルの試射などを公開した。ここで、超音速巡航ミサイルはロシアの艦艇発射極超音速巡航ミサイル「3M22ツィルコン」と形状が似ていた。また、駆逐艦「崔賢」のマストに搭載された4面のフェーズド・アレイ・レーダーは、ロシアのカラクルト型コルベットに搭載されたレーダーと配置状況や設置角度などが似ている。イージス艦に搭載されるフェーズド・アレイ・レーダーは360度全方位の監視が可能だ。崔賢型の複合・近距離対空防御システムもまた、ロシア製の「パーンツィリ」と形状が似ている。

 今年3月に公開した空中早期警戒管制機は、ロシア製の輸送機イリューシン76(IL76)にレーダーを積んだものとみられる。韓国軍は「空の指揮所」と呼ぶ空中早期警戒管制機を米国から導入して使っているが、空中偵察アセット(軍事資産)が皆無の北朝鮮が韓国と類似した戦力を有し始めたという意味を持つ。韓国軍関係者は「北朝鮮は戦略兵器の偵察衛星、発射台技術はもちろん無人機や電子戦装備、対空ミサイルなどを実物でロシアから受け取っている」と語った。

梁昇植(ヤン・スンシク)記者、ヤン・ジホ記者

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