▲仁川国際空港第1ターミナル出国ゲートのフライトボード。日本の各地に向かう便名が並んでいる。19日午後撮影。/コ・ウンホ記者

 これまで19回日本を旅行したというサラリーマンのキム・ドンヒさん(32)は今月初めにも休暇を取り、5泊6日の日程で鹿児島県と宮崎県の観光を楽しんだ。以前は東京、大阪、福岡など大都市を主に回ったが、最近は松山や別府など規模が小さい地方都市を主に観光しているという。キム・ドンヒさんは「最近の東京や大阪は外国人観光客があまりに多く、日本を旅行している気分にならない。次は本州最北端の青森県に行ってみたい」と語る。

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 キム・ドンヒさんのように日本各地を旅行する韓国人観光客が最近増加し、仁川国際空港から日本の地方都市への直行便総数は日本の主要空港に向かう便よりも多くなっている。今月初めに仁川から北海道東部の帯広空港と茨城空港路線が新たに追加され、仁川空港から日本各地への直行便は合計32便(31都市)となり、路線数だけなら東京の羽田空港(49便)に次いで多くなった。沖縄の那覇空港(31便)はもちろん、札幌の新千歳空港や福岡空港(27便)、大阪の伊丹空港(26便)、名古屋中部空港(19便)をも上回っている。

 地方都市直行便増加の背景には、韓国のLCC(格安航空会社)が韓国人観光客の多様な顧客ニーズに合わせて差別化を進め、日本各地への新たな直行便を積極的に開拓、あるいは便数を増やしている現状がある。仁川空港は2013年に九州北西部の佐賀空港行き開設後は新規の路線はなかったが、コロナ渦後の昨年と今年だけで6路線が新たに加わった。昨年は仁川から5月に宮古島便、12月に徳島便が新たに開設され、今年は4月に神戸行きと石垣島行きが開設された。大阪から近い神戸を除けばいずれも地方小都市の空港だ。

 また従来からあった路線も利用客が大きく増加している。先月仁川空港から日本の中小都市に向かう便の利用客を見ると、熊本城で有名な熊本はコロナ渦前(2019年10月)と比べて1073人から1万82人へと10倍近く増えた。「讃岐うどん」で有名な高松はコロナ渦前はわずか2719人だったが、先月は3倍以上の8951人を記録した。さらに松山は1773人から1万110人へと5.7倍、鹿児島は1667人から5641人と3.3倍に増えた。

 このような傾向は円安などの経済的な理由に加え、日本に対する韓国国民の好感度が高まったことも影響しているようだ。今年8月に韓国ギャラップが全国の満18歳以上1007人を対象に行ったアンケート調査によると、回答者の38%が「日本に好感を持っている」と回答した。年齢別では18-29歳が61%、30代が53%と特に好感を持っていることが分かった。さらに韓国リサーチが全国の満18歳以上1005人を対象に行った調査でも52%が「日本に好感を持っている」と回答した。

 旅行客も日本の地方都市への満足度は高いようだ。今年7月に北海道の釧路などを観光した大学生のパク・ポミさん(23)は「観光客ばかりの東京のような大都市とは違って、地方都市は物価も安いし、日本の伝統文化がしっかり保存されているのが良い」と語る。日本のアニメの背景やモチーフとなっている地方都市で「聖地巡礼」を楽しむ旅行も人気だ。人気アニメ「進撃の巨人」の作家の出身地である大分県日田市、また「名探偵コナン」劇場版の舞台となった北海道の函館などが特に知られている。

 日本の地方都市観光ブームには各自治体の努力も功を奏している。日本も韓国と同じく地方や小都市の消滅に危機感を抱いているが、地域活性化に向け自治体が先頭に立って韓国の航空会社に協力を呼びかけるケースが多く、韓国人観光客向けに「専用クーポン」を発行している都市もある。松山市は韓国人観光客に空港と市内をつなぐシャトルバス料金に加え、主要観光地の入場チケットも支援している。今月11日には宮崎県、長野県、徳島県など日本の10人の県知事がソウルを訪問し、小都市の宣伝キャンペーンを行った。長野県の阿部守一知事は「東京や大阪に来れば韓国人だけを見て帰るでしょうが、小都市は日本の本来の姿を満喫できます」と呼びかけた。

ユン・サンジン記者、キム・アサ記者

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