IT産業
不利な質問には答えず個人情報を勝手に収集する中国系AI、オープンAIを追い越す可能性は「20%以下」
「天安門事件について説明してくれる?」
中国の対話型AIモデル「ディープシーク」のAIチャットボットにこの質問を投げ掛けると、チャットボットは「申し訳ございませんが、その質問に対する答えを学習していません」と答えを渋った。グーグルのGeminiとオープンAIのchatGPTは、同じ質問に「1989年に北京で起きた政治運動」と答えた。ディープシークのAIモデルは、中国共産党の安定を脅かす特定のキーワードや質問について、答えることを阻止されているようだ。
ディープシークのような中国発のAIモデルは、「コスパAI時代」の到来をもたらし、世界的にAI導入のハードルを下げることに寄与した点では評価されている。しかし「社会主義の検閲」があるために、グローバル展開の可能性においては明らかに限界があると指摘が出ている。中国はインターネット時代の幕開けと同時に「グレート・ファイアーウォール(万里の防火壁、中国のインターネット検閲システム)」を築いて自国内で特定の政治的キーワードを検索できないようにし、SNS(交流サイト)に関しても厳しい検閲を実施してきた。
このような事情があるため、アリババやディープシークなど中国のAI企業は、開発初期から厳しい自主検閲を実施してきた。中国当局も昨年12月、「AI基盤の人間型相互作用サービス運営のための暫定措置」を通じ、AIサービスが安全保障や国家統合を阻害してはならないとくぎを刺した。AIモデルが生成する答えが中国当局の意向に合うよう制限され、時には歪曲される可能性もあるだけに、中国のAIモデルやサービスのグローバル化は、中国の歴史観や世界観を世界に広めて宣伝するツールとして使われるという指摘もある。
中国系AIのセキュリティーも問題視されている。全世界に広がったHUAWEI(ファーウェイ)の通信設備が各種の情報を勝手に収集しているという「バックドア問題」のように、中国系AIが世界のユーザーのデータを無断で収集する「窓口」になるという不安も高まっている。ディープシークが発表された当初、韓国国内・国外の複数の公共機関や企業はセキュリティーを理由にディープシークへのアクセスを遮断した。現時点では、ディープシークに入力した情報が安全に破棄されるのか、またディープシークに情報を抜き取るためのハッキングコードが仕込まれていないかどうか、ディープシークのサーバーがどこで管理されているのか、これらに関する正確な情報は何一つない。AI業界では「かつてのファーウェイのように、ある日突然中国のAIモデルが使用禁止になるかもしれない」として「地政学的リスクを考えると安易にディープシークを選ぶことはできない」という声が聞こえてくる。
中国系AIの技術的インフラの限界も指摘されている。米国による半導体規制の影響で最先端のAIチップ(GPU)が使えない上、自国内のAIチップ開発もまだ初期の段階だ。アリババのAIモデル「Qwen(クウェン)」の開発責任者を務めたジャスティン・リン氏は「3-5年以内に中国がオープンAIやAnthropic(アンソロピック)を追い越す可能性は20%かそれ以下だ」と述べた。ディープシークやファーウェイなど中国系AIの躍進を認めながらも、米国の資金力やAIインフラの優位性を考えると当面は米国を完全に追い越すのは容易ではないとの見方だ。
オ・ロラ記者