▲写真=NEWSIS

 2012年末、米メジャーリーグへの挑戦を予定していた18歳の大谷翔平が、メジャーではなく日本プロ野球の日本ハムファイターズに入団することを決めた。プロになっても高校時代のように投手と打者の両方で出場する「投打兼任」を保障する、という日ハムの提案が大谷の心を引き付けたのだ。翌日、日本の新聞各社は「大谷に二刀流を指令」などの見出しで大谷のプロ入りを大々的に報じた。侍をテーマにした映画やドラマ、漫画にしか出てこなかった「二刀流」という言葉が、野球というスポーツを通じて新たな生命力を得た瞬間だった。

【写真】義母・加代子さんらと観戦する大谷翔平の妻・真美子さん

 二刀流とは「2本の刀を使う剣術流派」を意味する。左右の手に大きさの異なる刀を1本ずつ持って戦う戦法だ。日本の幕府時代に活躍した伝説の剣術家、宮本武蔵が長い刀と短い刀を同時に使ったことで有名だ。宮本武蔵が主人公となっている大衆文化コンテンツには、二刀流という言葉が必ずといっていいほど出てくるが、日常的に使われる言葉ではなかった。2016年に大谷がリーグMVPを獲得し、日本シリーズ優勝まで成し遂げると、二刀流という言葉は海を越えて韓国にも本格的に上陸した。

 大谷のような選手を米国では「ツーウェイ(two way)プレーヤー」と呼ぶ。大谷が2018年にロサンゼルス・エンゼルスのユニホームを着てデビューした当時、専門家たちは二刀流に対して冷ややかだった。米紙ニューヨーク・タイムズは「日本では特別な選手だったかもしれないが、大谷はベーブ・ルースではない」と書いた。しかし大谷は、それを見返すかのように現代野球の常識を破壊してスーパースターとなり、二刀流に対する全世界の認識を完全に覆した。

 大谷がスポーツ界のアイコンになると、他の競技でも「第二の大谷」が続々と現れ始めた。来月開幕するミラノ・コルティナ冬季五輪でも注目すべき二刀流スターがいる。米国のスピードスケート選手、ジョーダン・ストルツは、短距離(500m、1000m)、中距離(1500m)、長距離(マススタート)で全て金メダル候補といわれている。実際に先月、ノルウェーで行われたISU(国際スケート連盟)ワールドカップで5冠を達成し、世界を驚かせた。これは、陸上のウサイン・ボルト(ジャマイカ)が主力の100mと200mだけでなく中長距離の800mと3000mで優勝するようなものだ。

 既に五輪で三つの金メダルを獲得している氷上のスター、シュザンヌ・シュルティング(オランダ)もミラノでショートトラック女子1500mとスピードスケート女子1000mという大胆な異種競技挑戦を決めている。1周111.12mのショートトラックと、400mのトラックを使用するスピードスケートは、共通しているのは氷の上を滑走するという点だけで、完全に別のスポーツだ。韓国代表としてはショートトラック女子のチェ・ミンジョンとキム・ギリ、スピードスケート女子ではキム・ミンソンとイ・ナヒョンが「氷上の二刀流」ことシュザンヌ・シュルティングとのメダル争いに挑む。

 マイナーな剣術用語だった二刀流は、大谷の人気のおかげでスポーツだけでなく日常の賛辞となった。専門性をベースにしながら優れた成果を出す多彩多能なマルチプレーヤーを象徴する言葉となったのだ。例えば、建設会社がIT分野へと事業を拡大すれば「二刀流企業」であり、文系の素養と理系の才能を併せ持った学生は「二刀流人材」と呼ばれる。本業に忠実でありながら副業にも精を出し、一生懸命に生きている隣人に「二刀流」という修飾語を付けても全くおかしくない。

 宮本武蔵は2本の刀を使い、命懸けで戦った約60回の対決で一度も敗れなかったという。自身が著した兵法書「五輪書」で、刀を使う技術よりも、勝利に向けた心構えのほうがはるかに大切だと強調した。悪い心を警戒し、無分別な行動を慎み、広い視野で事物の真実を見極めることができれば、一人でも数十人を打ち負かすことができると述べた。大小の勝負が連続する日常で、自分なりの二刀流を鍛錬することも悪くないのではないか。

陳仲彦(チン・ジュンオン)スポーツ部長

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