デジタルニュース本部=朴垠柱(パク・ウンジュ)副本部長
「『小川から竜が出る』(トビがタカを生む=平凡な家庭から優秀な子が生まれる)ということわざは、むなしい希望を植え付ける。社会の間違ったシステムに対する免罪符を与える。小川から竜が出るには誰かの犠牲が前提となる。財閥企業は国から特恵を受けて成長した。だが、成功した小川生まれの竜が小川の生き物を殺す先頭に立っているのと同様、財閥企業は中小企業を搾取している。むしろ犠牲者のドジョウが生きられるように小..
続き読む
デジタルニュース本部=朴垠柱(パク・ウンジュ)副本部長
「『小川から竜が出る』(トビがタカを生む=平凡な家庭から優秀な子が生まれる)ということわざは、むなしい希望を植え付ける。社会の間違ったシステムに対する免罪符を与える。小川から竜が出るには誰かの犠牲が前提となる。財閥企業は国から特恵を受けて成長した。だが、成功した小川生まれの竜が小川の生き物を殺す先頭に立っているのと同様、財閥企業は中小企業を搾取している。むしろ犠牲者のドジョウが生きられるように小川の環境を整えることに専念すべきだ」
全北大学のカン・ジュンマン教授が書いた本『小川から竜が出てはならない』の一節だ。「小川生まれの竜」をめぐる論議の中で最も挑発的かつ闘争的な見方だ。
厳しい現実を乗り越えて作り上げた成功神話「小川生まれの竜」に対する見方はさまざまだ。「小川生まれの竜は最悪の夫になる」という経験談から、「小川をコンクリートで覆ったのに、どうして竜が出てきたのか」という社会環境責任論、「それでも小川生まれの竜は韓国社会の希望だ」という結果オーライ型もある。
どれにしても今の時代に「小川から竜が出る」のは非常に難しいという点では誰もが共感している。韓国開発研究院(KDI)が先日発表した報告書によると、最近は子や孫の世代になっても上の世代と同じ社会階層を引き継ぐ現象が再び強まり、「U字型推移」になっているという。全国20-69歳の成人男性1500人について、社会的・経済的地位の4世代にわたる相関関係を分析した結果、「祖父と父」の間では関連性が0.599、「父と本人」の間では0.449、「本人と息子」の間では0.600だった。つまり、親の階層に関係なく自分の階層が上がった時期もしばらくの間はあったが、私たちの子ども世代のころには階層逆転が起こるということだ。
このような考え方の極端な例を、最近ヒットしている歌手パク・チニョンの曲「Who’s Your Mama?」で見た。その歌詞は次の通りだ。「君、ウエスト幾つ?/24インチよ/ヒップは?/34インチよ/…ママは誰?/いったい君をどう育てたの」。細かいことを言えば、この歌詞は間違っている。体制抵抗的な容姿の持ち主である記者は、身体発育と容姿は環境的要因よりもDNA(遺伝子)のせいだと思っている。パク・チニョンの歌の歌詞は「いったい君をどうやってこんな風に産んだの」と書くべきだった。
「顔じゃなくて中身が大事」という言葉は小学生でも信じない時代になったが、それでもこのように露骨に遺伝形質を賛美し、それを大衆が受け入れる時代は何を意味しているのだろうか。「知之者不如好之者 好之者不如楽之者」(これを知る者はこれを好む者に如〈し〉かず、これを好む者はこれを楽しむ者に如かず)。これは「あることを理解している人は知識はあるが、好きな人にはかなわない。あることが好きな人も、楽しんでいる人にはかなわない」という意味の孔子の言葉だ。この言葉を最近の世相に当てはめれば「楽之者不如相続者」(楽しむ者も相続者ほどは楽しめない)ということになるだろうか。
嫉妬すらあきらめるこの時代が悲しい。竜どころか、竜になり損ねた大蛇にもなれない。今こそ「小川生まれの竜」というパラダイム(概念的枠組み)を変える時が来たのだ。小川で最も成功しているのが竜だという考え方を変えなければならない。小川には小魚も、ナマズも住んでいる。小川から突然クマやトラが出てくる可能性があってもおかしくない。多様な価値観が共存して、それが現実になる国。これこそおそらく韓国政府が提唱する「創造経済」の哲学なのだ。しかし、どの企業グループも「創造経済を応援する」という広告を久しく出していないし、「創造経済」が成し遂げた成果が何なのか、思い当たることもない。
デジタルニュース本部=朴垠柱(パク・ウンジュ)副本部長
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
Copyright (c) Chosunonline.com