▲2021年にミョンシン群山工場で開かれた「群山型雇用」による生産1号車である「タニゴバン」出荷式で宋河珍(ソン・ハジン)全羅北道知事(左から3番目)など出席者が記念撮影をしている/聯合ニュース
「群山が電気自動車(EV)の生産基地として復活すると思っていました。買収元の会社は見慣れない中小企業でしたが、車を作り続けると言うのでうまくいくと信じていました。当時大統領と政府も関心を示していたので、この大きな工場が今のように放置されると予想した人はほとんどいなかったはずです」
11月14日、全羅北道群山市紙谷洞で会った住民Hさんは暗い表情でそう話した。Hさんは普段、仕事で紙谷洞から車で約10..
続き読む
▲2021年にミョンシン群山工場で開かれた「群山型雇用」による生産1号車である「タニゴバン」出荷式で宋河珍(ソン・ハジン)全羅北道知事(左から3番目)など出席者が記念撮影をしている/聯合ニュース
「群山が電気自動車(EV)の生産基地として復活すると思っていました。買収元の会社は見慣れない中小企業でしたが、車を作り続けると言うのでうまくいくと信じていました。当時大統領と政府も関心を示していたので、この大きな工場が今のように放置されると予想した人はほとんどいなかったはずです」
11月14日、全羅北道群山市紙谷洞で会った住民Hさんは暗い表情でそう話した。Hさんは普段、仕事で紙谷洞から車で約10分の距離にある小竜洞産業団地をよく訪れるという。そこにはかつて韓国GMが操業していた群山工場がある。現在は自動車部品メーカーのミョンシンに看板が変わっている。
Hさんは「ミョンシンは2019年に群山工場を買収し、中国のEVを受託生産すると言ったが、この5年間で工場がまともに稼動するのをほとんど見たことがない。通りがかりに工場をのぞくと、まるで巨大な空き地のように寂れているだけだ」と語った。
同日夕方に訪れた旧韓国GM群山工場は、物寂しい雰囲気が漂っていた。かつて工場で生産された数千台の車でぎっしり埋まっていた出荷待機場は、雑草だけが生い茂り、廃墟のように放置されていた。ミョンシンが買収した後、ほとんど管理をしていないようで、鉄門はさびついたまま固く閉ざされていた。出荷事務所もゼネラルモーターズ(GM)のシボレーブランドのマークが色あせたまま残っていた。
旧韓国GM群山工場の正門はバリケードで塞がれており、出入りする車もほとんどなかった。周辺にあるセアベスチール、タタ大宇商用車、DS丹石などの工場に数台のトラックと乗用車が出入りしているのとは対照的だった。
■中国のEV受託生産は実現せず
ミョンシンは現代自動車、起亜の1次下請け会社であるMSオートテックの子会社だ。MSオートテックは2019年6月、ミョンシンを通じ、韓国GM群山工場を1130億ウォン(約124億円)で買収した。MSオートテックは、韓国でEVを生産し米国などに輸出する中国メーカーから生産を受託する計画だった。
ミョンシンは群山工場を買収した後、2019年9月に中国のEVメーカーである拝騰汽車(Byton)と受託生産契約を結んだと発表した。拝騰汽車が開発していた電気自動車「M-byte(エムバイト)」を年5万台生産する計画だった。当時拝騰汽車は「中国のテスラ」と呼ばれるほど、世界の自動車業界で注目される存在だった。
しかし、中国EVの受託生産メーカーとして成長するというミョンシンの計画は、拝騰汽車の破産で水泡に帰した。拝騰汽車は2018年に「M-byte」のコンセプトカーを公開し、2019年末に量産を開始する計画だったが、巨額な債務に耐えられず廃業した。その後、中国のEVバブルがはじけ、多くのメーカーが経営難に見舞われ、ミョンシンは拝騰汽車に代わる受注先探しが難航した。
■文大統領肝いりの「群山型雇用」も頓挫
文在寅(ムン・ジェイン)政権は群山市に電気自動車クラスターを育成し、雇用を増やすという「群山型雇用」事業を2019年から開始した。かつて韓国GMの車両を大量生産した群山工場を、新しいEV受託生産基地として活用するというミョンシンは、群山型雇用事業を代表する中核企業に選ばれた。文在寅前大統領は2019年、ミョンシン群山工場で開かれた「群山型雇用共生協約式」に出席し、「群山がEV時代の新たな主人公になるだろう」と述べた。
しかし、当初の期待とは裏腹にミョンシンは受注先となる中国のEVメーカーを探すのに苦労し、群山型雇用事業はほとんど成果を上げられなかった。ミョンシンは2021年、韓国の超小型EVメーカーであるテチャンモータースと小型貨物車「タニゴバン」の受託生産を行う契約を結んだが、群山工場の規模からして非常に少ない生産台数だった。
群山型雇用事業は今年3月、3カ年の第1次計画が終了した。ミョンシン群山工場が中心となり、3年間でで35万5327台のEVを生産する計画だったが、実際の生産台数は4292台で、目標値の1.3%にとどまった。
■ミョンシン、完成車生産から撤退
突破口を見いだせなかったミョンシンは、今年5月に完成車事業から撤退すると表明した。群山工場は自動車部品の製造と自動化設備事業などの用途で使うことにした。電気自動車の需要減少で持ちこたえることができず、完成車の受託生産を断念したのだ。
群山工場が自動車部品の生産基地として、まともに稼働できるかは不透明だ。系列企業のミョンシン産業は米うEV大手テスラの下請け会社に部品を納品しているが、既に米テキサス州に現地工場を置いており、生産を分散するのは難しい。仮に新規受注しても、群山工場の総面積が129万平方メートルに達する点を考えると、部品生産だけでは工場を維持する理由がないというのが業界の見方だ。
ミョンシンは完成車事業からの撤退を決定する際、群山工場の敷地を分割売却し、財務構造の改善を進めると説明した。群山市紙谷洞のある住民は「かつて旧韓国GM工場は群山地域の経済を支えるほど好況を享受した。工場が分割売却されれば完全に歴史の中へと消えることになる」と話した。
チン・サンフン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
Copyright (c) Chosunonline.com