大学院生のAさんは、ソウル市内の私立大学で1年にわたり半導体の碩(修)博士統合課程を履修したが、昨年2月に大学に自主退学届を提出した。同じ大学の電子工学部を卒業して大学院に進学し、卒業後は半導体関連の大企業の研究開発(R&D)部門に研究員として就職するつもりだったが、突然夢を諦めたのだ。Aさんを指導していた大学教授は「周囲の学生に聞いたところ、医学部への進学を目指して準備中だと聞いた」として「就..
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大学院生のAさんは、ソウル市内の私立大学で1年にわたり半導体の碩(修)博士統合課程を履修したが、昨年2月に大学に自主退学届を提出した。同じ大学の電子工学部を卒業して大学院に進学し、卒業後は半導体関連の大企業の研究開発(R&D)部門に研究員として就職するつもりだったが、突然夢を諦めたのだ。Aさんを指導していた大学教授は「周囲の学生に聞いたところ、医学部への進学を目指して準備中だと聞いた」として「就職が確実な半導体分野でさえも若い人材はそっぽを向き、安定した未来を求めて離れていく。それが私たちの現実だ」と話した。
韓国の半導体産業を率いていくべき人材の離脱が加速化している。大学志願者の医学部集中現象の影響で半導体学科の学部生の中退が増加しているのに続き、大学院でも半導体専攻の学生たちが学位過程の途中で退学するケースが相次いでいるのだ。大学情報サイト「大学アルリミ」によると、2023年に17人だった半導体関連の大学院の退学者は、昨年は26人に増えた。半導体専攻の大学院生であれば、事実上サムスン電子やSKハイニックスなど大企業への就職が約束されたも同然で、これまで退学者はほとんどいなかった。ところがここに来て中退する大学院生が増えているのは、医学部人気の高まりが主な原因だと分析されている。昨年、碩博士統合課程の自主退学者のうち80.7%(26人中21人)がソウルなど首都圏の大学院生だった。医学部進学が可能な難関大学の大学院生が退学するケースが多かったわけだ。高麗大学のシン・チャンファン教授は「修士・博士の人材は卒業と同時に大企業や政府の研究所で研究開発の中核人材として働けるため、こうした人材の離脱は学部生の離脱以上に業界にとって大きなマイナスとなる」と指摘した。
半導体を専攻する学部生の退学も増え続けている。サムスン電子への就職が保証される「半導体契約学科」を運営中の大学4校(延世大・成均館大・KAIST〈韓国科学技術院〉・POSTECH〈浦項工科大〉)では、同学科の自主退学者が2020年の8人から23年には18人に増え、昨年も同数の退学者が出た。
サムスン電子とSKハイニックスが19年から主要大学に導入し始めた「半導体契約学科」とは、卒業後にその企業への就職が保証されるものだ。企業側が4年間、大学の授業料を全額負担し、それ以外に奨学金や生活費も支給するなど非常に恵まれた条件のため、理工系の人材に人気が高かった。学部在学中に無料で海外研修を受けさせてくれる大学もある。しかし最近、受験生の医学部志向が強まるにつれて、一部の大学では入試で定員割れが起きているほか、自主退学を選ぶ学生も増えている。
大手予備校の鍾路学院によると、昨年ソウル地域にある五つの大学の半導体契約学科に合格しながらも入学手続きをしなかった受験生は138人で、該当学科の一般入試での募集人数(77人)の1.8倍だった。SKハイニックスの契約学科である漢陽大学の半導体工学科では、募集人数(10人)の3.6倍に当たる36人が入学手続きをしなかった。延世大学のシステム半導体工学科では、募集人数(25人)の2.6倍に当たる65人が合格しながらも入学手続きをしなった。医学部に同時に合格した受験生がかなりの数に上り、半導体学科ではなく医学部への進学を選んだとみられる。
複数回の追加募集に出願してようやく学科に入学した大学生も、途中で学業をやめるケースが増えている。「大学アルリミ」によると、昨年は半導体契約学科を含む半導体専攻の学生の中退者が184人に上った。ある私立大学の教授は「正確な統計はないが、大企業への就職が可能な半導体専攻を途中で諦めた理由の大半は、医学部進学だと考えて差し支えない」として「特に最近の政府による医学部定員増加政策の影響で、半導体工学をはじめとする先端分野専攻の学生の離脱が大幅に増えた」と述べた。
企業と大学がやっとのことで育成した半導体人材が海外に流出するケースも増えている。世界最大のファウンドリ(半導体受託生産)企業TSMC(台湾積体電路製造)は今年初め、韓国国内で半導体の修士・博士レベルの専攻者を大量に採用したことが分かった。日本に建設中の新工場に投入するエンジニアを確保するためだ。米国のメモリ企業マイクロンも昨年12月、ソウル市立大学・釜山大学・慶北大学など韓国国内の大学で採用説明会を開いた。中国のメモリ企業の場合、韓国の半導体専攻者に対して韓国企業の2-3倍に上る高額年俸を提示しているという。
崔仁準(チェ・インジュン)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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