▲写真=UTOIMAGE
共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補が当選した第21代大統領選挙は、多くの面で異例の内容となった。前任者が自爆行為とも言える戒厳令で、あれほど憎んでいた政敵に大統領職を献納したことは、今後の歴史に刻まれることだろう。国際政治専門家たちは選挙過程で外交・安保イシュー(問題)が論争対象にならなかったという事実に注目している。これまで民主党がおおむね守勢に追い込まれた対北朝鮮政策と韓米同盟関連の論..
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共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)候補が当選した第21代大統領選挙は、多くの面で異例の内容となった。前任者が自爆行為とも言える戒厳令で、あれほど憎んでいた政敵に大統領職を献納したことは、今後の歴史に刻まれることだろう。国際政治専門家たちは選挙過程で外交・安保イシュー(問題)が論争対象にならなかったという事実に注目している。これまで民主党がおおむね守勢に追い込まれた対北朝鮮政策と韓米同盟関連の論議は、今回の大統領選挙では見られなかった。
【表】李在明候補の対日発言の変化
これには幾つかの背景がある。何よりも北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が「二つの国家体制」を公式化し、統一放棄を宣言したことで、民主党は「文在寅(ムン・ジェイン)」陣営のように「韓半島(朝鮮半島)新経済共同体」のような理念的スローガンを掲げることは困難となった。全国大学生代表者協議会(全大協)で学生運動を主導した、李在明大統領の周辺勢力の弱体化で、親北イメージが低下し、理想主義的な政策を語る人が減った。
李在明候補陣営に国家安保室長として任命された魏聖洛(ウィ・ソンラク)議員、趙顕(チョ・ヒョン)元外交部第1次官をはじめとする高官級外交官上がりが一挙に布陣したのは、注目に値する変化だった。彼らは陣営で各種委員会の委員長、副委員長、幹事として布陣し、戦略樹立に深く関与した。韓米日3カ国の協力を強調し「李候補が反日親中のイメージから脱しなくては大統領にはなれない」と述べ、現実主義外交に転換することを重ねて助言した。「日本は韓国人が毎年1000万人以上訪れる友好国だが、中国は西海(黄海)を自国の内海にしようとする脅威的存在」という一般国民の認識を受け入れるべきだという声が陣営内で大きく取り上げられた。
このため、大統領選挙期間中の李在明大統領の外交・安保発言は、過去と比べて洗練されたものとなった。福島汚染処理水の放流問題について、過去のように「太平洋沿岸国家に対する宣戦布告」とは言わなかった。ただ、「なぜ中国に構うのですか。とにかく謝謝(シエシエ)、台湾にも謝謝、と言えばいい」という大衆融和的発言を再び強調したのは遺憾だった。台湾有事の際の対応策を問う質問に「宇宙人が地球に侵攻しようとした時に、その答えを考えてみる」という回答も軽い認識を表した側面となった。
8年前、「朴槿恵(パク・クンヘ)罷免」のおかげで就任した文在寅大統領は、前任者を消去することに全力を尽くしたことで、左派陣営内の「反日親中」という理念的慣性を超えることができなかった。政権が発足するやいなや、韓日「慰安婦」合意を暴き出し、事実上破棄させた。日本の輸出規制措置に対して米国が支持してきた軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の終了を宣言し、安保協力まで揺さぶった。これに対し、トランプ大統領が日本の安倍晋三首相の側に傾き、韓米日3カ国の協力体制は瓦解の危機を迎えた。
韓日間の葛藤が深まった状況で、文在寅政権は中国に頼ろうとしたものの、帰ってきたのは屈辱的なものだった。2017年の国賓訪問当時、韓中首脳会談は形式的であり、「一人飯外交」という批判の声が上がった。同行した韓国人記者らが中国の警護員に暴行される事件まで発生した。THAAD(高高度防衛ミサイル)の追加配備、米国主導のミサイル防衛(MD)への参加、韓米日軍事同盟を全て拒否する「THAAD3不」政策は、「低姿勢外交」の標本として韓国国民のプライドを傷つけただけでなく、米国の信頼をも失う結果につながった。これに対北朝鮮屈従外交論議が重なり、文在寅政権は国政運営の原動力を失ってしまった。
6月4日に就任した李大統領が、文在寅政権を反面教師として大統領選挙期間中に強調した安定的な外交路線を維持するならば、民主党代表時代の外交安保関連論議は再現されないことだろう。大統領就任演説の「堅固な韓米同盟を土台に韓米日協力を固め、周辺国との関係も国益と実用の観点でアプローチする」という言及通りに実行するなら、李大統領に投票しなかった国民が心配することはない。李大統領が過去の感情的修辞や理念的偏向から抜け出し、外交・安保の新しいパラダイムを確立することで、「成功した大統領」として記憶されることを全ての国民が願っている。
李河遠(イ・ハウォン)外交安保エディター
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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